保育所交流 遊び体験共有

yomiDr.
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園庭、プール利用 連携進む

 環境の異なる保育所の子どもが行き来し、
互いの施設を使ったり一緒に遊んだりする「保育所間交流」が、各地で行われている。

 同じ地域の子どもが、入所した保育所によって
保育内容や遊びの体験に差が出てしまうのを補う狙いがある。

 「こんにちは! 水遊びに来ました」。
7月中旬の午前10時、東京都台東区の区立三筋保育園を、
徒歩10分ほどの距離にある都認証保育所「ぽけっとランド おかちまち」の
1歳児7人が、保育士3人とともに訪れた。

 同保育所はマンション内にあり、園庭やプールがない。
そこで夏の間は毎週金曜日、園児が数人ずつ三筋保育園を訪れ、
2階遊戯室のベランダを借りて水遊びをする。
この日は洗濯用のたらいなどに浅く水をはり、水遊びを楽しんだ。

 「ぽけっとランド おかちまち」園長の早川佳代子さんは
「暑い日に外で水を浴びるのは、子どもたちには何よりの楽しみ。
普段できないことが、ここではできます」と保育所間交流を歓迎する。

 夏以外の季節は、泥遊びやボール遊びをして体を動かす。
一方、三筋保育園の園児が「ぽけっとランド おかちまち」を訪れる際には、
小麦粘土を使った室内遊びやリトミックを楽しむという。

 都の認証保育所は、施設の広さなどが、
国の基準を満たす認可保育所よりも基準が緩やか。
このため小規模だったり、園庭やプールを持たなかったりするケースが少なくない。
そこで台東区は2007年度から、
区内の認証保育所と近くの区立認可保育所をペアにした連携園を提示。
保育所同士を仲介し、交流を支援してきた。

 現在は区内の認証保育所は10か所。
互いの保育の特徴を生かした交流を、保育所同士で年間計画を立てて行っている。
アレルギー除去食や不審者対応についての職員研修を、
連携園同士で合同で実施するケースもある。

 東京都社会福祉協議会のまとめでは、
こうした保育所間交流は都内では台東区のほかに江戸川区、狛江市などでも行われている。
保育所が独自に連携交渉を進めるのではなく、
自治体が連携協定書や取り決め書を作成して連携を支援すると、
交流が進みやすいという。
課題は、子どもたちが園を移動する際の安全管理や、
双方の園での事故をいかに防ぐか。
付き添いの保育士や受け入れ側の園に、細心の注意が求められるという。

 保育所間交流は首都圏に限らず、地方都市でも行われている。
三重県鈴鹿市の山間部にある私立「ながさわ保育園」と
海に近い私立「いそやま保育園」は、バスで互いの園を行き来して交流している。
夏は山の園児たちが海の保育園を訪れて海水浴を体験し、
秋には海の園児らがサツマイモを掘りに山の保育園を訪れる。
また、愛知県幸田町の私立「ももの木保育園」には、
地元の公立保育所の園児が訪れ、リズム遊びを一緒に楽しんでいるという。

 東洋大学教授(児童福祉学)の森田明美さんは
「保育所間交流は、保育所によって異なる保育内容や遊びの体験を共有できるほか、
子どもが多くの大人に出会う機会を作り、
地域で子育てを支えることにつながる」と指摘する。
「どの保育所にどんな子どもがいるかを保育者同士で把握でき、
災害時にも役立つだろう」と話している。(月野美帆子)
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