此花区でユニーク国際教育 異文化を“課外授業”

大阪日日新聞
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 大阪市此花区でことしから、行政、小中学校、青年海外協力協会(JOCA)の
3者による国際教育の連携が進んでいる。
青年海外協力隊OBらによる講演や異文化を体験するワークショップなどを
区内の小中学校で定期的に開催。
国際社会で活躍できる人材育成が求められる中、
子どもたちの知的好奇心を刺激しようという試みだ。

■区長発案

 「世界にはいろんな人がいて、いろんな生活がある。
外国の人を見かけたら、どこから来てどんな生活をしているのか考えてみて」

 6月中旬。区内のある小学校で開かれた土曜日授業。
アフリカのベナンで活動経験を持つJOCA近畿支部開発教育担当の赤嶺結衣さん(26)は、
水の入ったバケツを頭の上に乗せて運ぶアフリカの水くみ体験や
民族衣装の試着などを交え、日本と外国との生活スタイルの差違や
日本とのつながりを伝えた。

 授業には保護者も参加。
そのうちの一人、会社員の川戸誠一さん(36)は
「大人でも日ごろ聞くことができない貴重な話ばかり。
子どもには少しでも何かを感じ取ってもらえれば」と独特な取り組みに理解を示す。

 火付け役は自身もジンバブエで隊員参加の経験を持つ同区の西原昇区長。
「教育で大切なことは興味を持ってもらうための“きっかけ”づくり。
子どものころの経験は大人になっても覚えているもので、
人生を切り開くヒントにもなる」と思いを語る。

 ことし3月から国際理解講座と題し、各校にアプローチ。
JOCAの協力を得て隊員OBらと一緒に学校を訪問し、講演活動を行っている。
■創意工夫

 ユニークな“課外授業”は現在、区内六つの小中学校で実践している。
特に水の大切さや識字率をテーマにこれまで3回の授業を行ってきた
此花中(太田忠男校長)は、自由参加ながら毎回50人近くが出席。
日ごろみせない生徒たちの反応を見ることができるとあって、
教員も10人以上は参加するという熱の入りよう。
生徒の中には海外で働くにはどうすればいいか、
といった個別の相談を受けた教員もいたという。

 同授業を担当する山崎向太教諭(34)は
「外国人に慣れるために、二学期からは生徒たちに
外国人を連れて学校周辺を案内させたい」など次のステップへ構想を巡らせる。

 赴任中の現役隊員と授業の連携を模索する小学校も出てきた。
IT関連企業出身でベルギーでの海外勤務歴を持つ公募校長、
玉川実二校長が着任した梅香小だ。
ことし9月にトンガへの派遣が決まっている隊員と
インターネット電話サービス「skype(スカイプ)」などを使い、
現地と梅香小を中継。現地から隊員に授業をしてもらったり、
トンガの子どもたちと交流を図る計画で、
玉川校長は「外国を身近に感じさせてあげたい」と意気込む。

 ネットの普及で豊富な情報量とは裏腹に狭く偏りがちな人間関係に陥りやすい
昨今の子どもたちの環境に危機感を抱く西原区長。
「たくさんの人と会って話し、いろんな経験をすることで人間が磨かれる」。
各学校の熱意と創意工夫、活動のさらなる拡大に期待を込める。
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