児童を見守る「登校じゃんけん」おじさん

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群馬・高崎市立片岡小PTA会長 鈴木充さん 47

 「じゃんけんおじさん、じゃんけんしよ」「じゃんけんぽん、あいこでしょ」。
高崎市片岡町の同市立片岡小学校近くの歩道橋前に、
登校中の児童らの元気な声が響き渡る。

 50人以上の児童と毎朝、じゃんけんを続け、
『じゃんけんおじさん』の名で親しまれている。同小のPTA会長でもある。
午前7時半になると、「地域防犯パトロール」と書かれた黄緑色の帽子をかぶり、
旗を持って歩道橋の前に立つ。

 全校児童のほとんどの顔と名前を覚えている。
「どうした?今日は元気ないな。母ちゃんに怒られたか」。
児童一人ひとりの顔色を見て、やさしく声をかける。

 毎朝じゃんけんをするのが楽しみという5年生の森下真帆さん(11)は
「おじさんは面白くて優しい。会うと元気がわいてくる」とほほ笑む。

 通学路で児童とじゃんけんをするようになったのは7年ほど前。
長女の入学後、登校中の安全を見守ろうと、毎朝、学校まで一緒に歩いていた。
1週間後には、笑顔を振りまいて歩く姿にひかれ、
大勢の児童が一緒に登校するようになった。

 じゃんけんは、児童とすぐにうち解けるための手段として思いついた。
「勝っても負けてもあいこでも、じゃんけんでみんな笑顔になる」と言う。

 中学時代に不登校になったことがある。
そんな経験から「『今日は学校に行く気がしない』と、
気分が良くないまま家を出てきた子もいる。
そんな日でも、気持ちを切り替えて正門をくぐってほしい」と願う。
学校に行きたがらない児童と手をつなぎ、一緒に登校したこともある。

 通勤時間帯には渋滞を迂う回かいしようと、進入禁止の通学路に入ってくる車もある。
児童の安全を守るため、そうした車に目を光らせるのも役割だ。

 注意した運転手から暴言を吐かれたり、無視して進入されたりすることもある。
だが、ねばり強く注意を促すことで、進入する車は確実に減っているという。

 全国で児童が犠牲になる事故が起きれば、保護者に注意を喚起する。
「子供たちの安全を守るため、手を抜くことはできない」と語る。

 子供たちが大人になった時、自分の存在を思い出し、
地域の安全を守る新たな「おじさん」「おばさん」になってくれることを夢見る。
「声かけが絶えない地域を作ることが、子供たちの安全を守ることにつながる。
目指すは、世界一の地域のおじさん」。
そう心に誓い、通学路に立つ日々が続く。(大塚美智子)



 すずき・みつるさん 1965年9月3日生まれ。高崎市出身。
駒沢大法学部卒業後、読売群馬広告社に入社。
高崎市青少年問題協議会委員なども務める。
中学3年と小学4年の2人の娘の父親でもある。
好きな言葉は「笑う門には福来たる」。
ドラマ「24」の正義感あふれる主人公ジャック・バウアーにあこがれている。
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