68万人の潜在保育士「子どもが好きだからこそ働けない」?

財形新聞
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厚生労働省が12日発表したデータによると、待機児童の数は3年連続で減少し、
今年4月1日時点で2万2741人となった。
それでも、依然2万人超の高水準が続いている。
認可保育所に預けるのをあきらめてしまった保護者も多いことを考えれば、
実際はその数倍にのぼるとみられる。

 安倍内閣の「成長戦略」では今後5年間で40万人分の保育の受け皿を確保するとし、
2017年度末までに待機児童の解消を目指すとしている。
そのためには新たに7万4千人もの保育士が必要となる。

 しかし現在、保育士の資格をもちながら保育士として働いていない
「潜在保育士」は68万人ともいわれる。
2年前に厚労省が行った調査によれば、潜在保育士が保育園で就労していない理由は、
「求人しているが条件に合う求人がない」が29.6%、「就職に不安がある」が26.4%、
「就職する必要性を感じない」が24.5%だった。
条件を整えれば就労できる層が3割、
不安要素を取り除けば就労できる層が3割いる。

 ところがその「条件」を整えたり、「不安要素」を取り除いたりするのは容易ではない。
潜在保育士が再就労するにあたっての不安要素は、
「家庭との両立」が最多で48.6%、「自身の健康・体力」が45.5%だ。
特に、子育て世代である30代があげた理由には、
「給与への不満」と「家庭との両立が困難」が目立つ。
中でも「自分の子どものことを1番に考えたい」という理由が特徴的だ。

 子どもが好きだからこそ保育士を選んだ保育士たちは、
自分に子どもが生まれれば、一緒に過ごす時間を大切にしたいという思いが強い。
そこに加えて保育士特有の勤務時間の長さや責任の重さ、
人間関係への不安、給与の低さを考えれば、
再就労へのモチベーションは低くなるだろう。

 潜在保育士たちに働いてもらうためには、
保育士という職業に就く女性たちの「子どもが好き」というそもそもの動機が、
彼女たちを家庭にとどまらせている側面を軽視することはできない。
保育士確保の問題は単に、勤務時間を柔軟にすることや
給与を少し上乗せする程度では、解決できない可能性が大きいのである。
(編集担当:北条かや)
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