厚労省の待機児童対策の費用は、一人当たり705万円!

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いよいよ、安倍総理の消費税引き上げの決断も、間近に迫ってきた。
法人税引き下げを巡って、ぎりぎりまで財務省と駆け引きをしている模様であるが、
残念ながら、8%への引き上げ決断はまず間違いない状況であろう。

しかし、今回の消費税引き上げを巡るドタバタ劇ではっきりしたことが一つある。
それは、消費税引き上げでは、「社会保障の安定財源は確保できない」ということである。
消費税引き上げに伴う景気対策や低所得者対策と称して、
3%引き上げのうち2%分を使ってしまうという。

それだけではなく、実質的に、消費税引き上げ財源を当て込んだバラマキが、
既に来年度の概算要求の随所で始まっている。
実際、今年度の概算要求はシーリングのない異例の青天井で、
史上最高額の99.2兆円にも達してしまった。

しかも、消費税が引き上げが決断されれば、
さらにその予算要求額は膨れることになるという。
これでは、消費増税でせっかく税収が増えたとしても、
むしろ支出で出てゆく方が多いことは明らかであり、財政再建にも何にもならない。

結局、単年度会計主義で生きている霞が関の官僚たちは、
増えた財源を、そのままばらまいて浪費してしまうのである。
既に1100兆円にも上っている政府債務を少しでも減らしたり、
高齢化でますます深刻化する将来の財政状況に備えようとする中長期的観点が、
全く欠如している。

まるで、いくら多くの餌を与えても、
その日にすべて食べつくしてしまう金魚のようである。
こんな近視眼的な習性を持つぶくぶく太った金魚に、
安易に追加の餌を与えるべきではない。
消費税引き上げなど安易に行わず、効率化の努力をさせないと、
この先、増税をいくらしてもきりがない。
社会保障の安定など、永遠に達成不可能である。
むしろ、消費税を上げれば上げるほど、不安定化する可能性すらある。

さて、今年度の概算要求で、特に目に余るのが厚労省であり、
何の効率化努力も感じられない30兆5,620億円もの
過去最大の予算要求を臆面なく行った。
消費税引き上げが決まれば、さらに、先日の社会保障国民会議で決まった
「社会保障の充実策」と称するバラマキも加えるという。

<参考>平成26年度予算概算要求の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/14syokan/

この概算要求がいかに焼け太りで、効率化努力を怠ったものか、
その象徴的な予算として「待機児童対策」の項目を見てみよう。
待機児童対策として、厚労省は、来年度の予算要求を4937億円行っている。
言うまでもなく、待機児童対策は、安倍政権の成長戦略の目玉の一つであり、
追い風にのって約5000億円もの多額の予算要求をしたこと自体は、別に悪いことではない。

しかし、驚くべきことは、その5000億円もの税金を使って、
厚労省が予定している保育所の増加定員数がわずか7万人であることである。
4937億円を単純に、7万人で割ると、
児童一人当たりで年間「705万円」と言うことになる。
これでは、保育所に預ける母親達の年収を上回るのではないか。驚くべき高コストである。

保育料収入とは別に、待機児童を一人減らすために
年間705万円もの税金投入が必要になるとは、いったい何事なのだろうか。

このからくりは、認可保育所の高コストの運営費だけではなく、
社会福祉法人が要求する施設整備費(建物代の補助金)や、
公立保育所の土地建物代が、予算の中に入っているからである。

現在、私立認可保育所のほとんどを占める社会福祉法人が
新しい保育所を建てた場合、建物代の87.5%が公費で補助される仕組みとなっている。
その内訳は、国の「安心こども基金」から50%、都道府県から25%、
市区町村から12.5%であり、すべて税金投入である。

たとえば東京都で100人定員の保育所を一つ作れば2億円程度の建物代がかかるが、
社会福祉法人が自分で用意するのは2500万円だけで、
残りの1億7500万円は公費が払ってくれる。
2500万円の自己負担も、厚労省管轄の独立行政法人(福祉医療機構)が、
非常に低利で融資を行ってくれる。

一方で、株式会社やNPOが設立した認可保育所では、
一切、この補助金や低利融資は必要ない。
これは当たり前のことであり、普通のビジネスでは、
土地・建物代は初期コストとして銀行からお金を借りて投資するのであり、
長期的に保育料収入や運営費の補助金の中から返していくのが常識だからである。

現在、株式会社やNPOが認可保育所を設立することは法律上認められており、
待機児童が深刻な地域では株式会社立の認可保育所が増えているが、
社会福祉法人や公立保育所を中心とする保育団体や保育労組の抵抗で、
いろいろな規制や参入障壁が残っており、まだ、全体の約2%にしか広がっていない。

本当は、5000億円もの公費が確保されるのであれば、
株式会社やNPOを中心とした保育所増加で対応すれば、
50万人程度いると推定される待機児童など、
ほとんど直ちに解決してしまうのである。
しかしながら、社会福祉法人という既得権を温存したまま、
高コスト構造を変えぬ待機児童対策では、
一人当たり705万円という非効率きわまりない、
馬鹿げたお金の使い方となってしまう。

消費税引き上げなどと言う安易な財源を与えて、
効率化のプレッシャーを弱めると、金はいくらあっても足りないと言う、
まさにその典型例である。
待機児童を抱える親にとっては対策は一刻を争うのに、
また、消費税を負担する国民の中には身を削るような思いをする人もいるのに、
まことに悲惨な話である。
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