東日本大震災:「未来の保育士」初の被災地訪問 神戸こども総合専門学院生、子どもやお年寄りと交流 笑顔の大切さ実感 /兵庫

毎日jp
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 NPO「よろず相談室」の分室が設置された
保育士養成校「神戸こども総合専門学院」(神戸市北区)の学生7人が
21〜24日、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県の気仙沼、石巻両市を訪れた。
記者は保育士を目指す学生らの初の被災地訪問に同行。
仮設住宅などで子どもやお年寄りらとふれあい、
「ボランティアの卵」としてスタートを切った学生らの活動を報告する。【桜井由紀治】

 「思いっきり遊ぼう」。
気仙沼市総合体育館駐車場に建てられ、78世帯が暮らす仮設住宅。
新聞紙を切り裂いた「プール」に、学生のタカコは勢いよく飛び込んだ。
それを見て仮設住宅の子どもたちも次々とプールに入り、
新聞紙の切れ端の投げ合いが始まった。

 子どもたちは、明日の生活が見えず苦しむ親を見て暮らしている。
どこか遠慮がちなこの子たちの笑顔を取り戻したい。
「未来の保育士」の見せ場だ。
他の学生もテニスラケットなどを手に、子どもたちを誘い込んだ。

 子どもたちの歓声につられて、住宅内からお年寄りらも姿を見せた。
子どもたちの笑顔に目を細め、住民同士の歓談も始まった。
自治会長の及川より子さん(55)は
「高齢者の引きこもりが心配」と話していた。
お茶会に誘ってもなかなか出てこないという。
和やかな光景に「子どもたちの力は大きいね」と喜んだ。

 学生のコースケは、小2の男の子に歩み寄った。
特養ホームの訪問では、気後れして入所者との交流の輪に入っていけなかった。
男の子がクワガタムシを飼っていることを知ると、
男の子と裏山に入り十数匹のバッタを捕った。笑顔を見せる男の子。
コースケは「遊び相手が近所の後輩ばかりだったので、
子どもは苦手じゃない」とはにかんだ。

 荒れた時期があり、成人してから通信制高校を卒業した。
児童養護施設の仕事がしたいと同学院に入った。東北訪問は迷った。
「自分のこともしっかりやれへんのに、ボランティアなんてできん」。
だが自分のできることを探して、子どもとふれ合った。

 学院には2児を育てながら学ぶ母親もいる。
さまざまな境遇の学生はやさしいまなざしを被災地に向けた。

 震災から2年半が過ぎ、被災地にはボランティアの姿が少なくなったという。
だが、妻友子さん(当時73歳)が行方不明となった
石巻市の荻原哲郎さん(75)は「2年半たっても、私たちは何も変わっていない」と訴える。
「よろず相談室」の牧秀一理事長も
「被災者はこれから見捨てられ感が強くなり、しんどくなる。
継続支援が必要だ」と指摘する。

 石巻市立青葉中で23日、開かれた交流コンサート。
同中吹奏楽部と学院講師でピアニストの長谷川香織さん(56)の
グループ「カノンストリングアンサンブル」が合同演奏し、被災者の涙を誘った。
冒頭、往復バスを提供し、自らも同行した高橋守雄・ひょうごボランタリープラザ所長代理は
「他の自治体が被災地支援を取りやめても、
兵庫県だけは支援を続けていきます」とあいさつした。

 物静かながら積極的に被災者の懐に入っていった学生のタロー。
「被災者に『必ずまた来ます』と約束しました。
待っている人たちがいるという責任は重い」と語り、被災地の再訪を誓った。
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