<子どもとネット>ネットパトロール 使い方の教育が急務

東京新聞
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 インターネット上でのいじめや非行、犯罪の芽をいち早く見つけて、
子どもたちがトラブルに巻き込まれるのを未然に防ごうと、
学校やネット事業者による「ネットパトロール」の取り組みが広がっている。
ただ、監視の範囲には限界がある。
子どもたち自身がネットを使いこなす力を身に付けるにはどうすればいいのか、模索が続く。
 (砂本紅年)

 約五千万人が登録するSNS(交流サイト)「モバゲー」を運営する
IT会社「DeNA(ディー・エヌ・エー)」。東京都渋谷区の同社の一室では、
アルバイトスタッフがパソコン画面に向かい、
サイト内の投稿に不適切な内容がないかチェックしていた。
 総勢四百人のスタッフが、二十四時間体制で監視。
書き込みだけでなく、会員同士がやりとりするミニメールや画像も対象だ。
出会いにつながるメールアドレスや電話番号、
「タヒね」(「死ね」の意味)など隠語を使った誹謗(ひぼう)中傷は、すべてNGワード。

 過去の違反事例に近い形の投稿は、自動的にリストアップされる。
隠語は監視をくぐり抜けようと巧妙化するため、
NGワードは二年前の千語から三倍に増えた。

 悪質な利用者は一時利用禁止や退会処分にする。
カスタマーサービス部の西雅彦部長は
「サイトの健全化によって保護者らの安心感を得ることは、
企業のメリットにもつながる」と話す。

 約三千七百万人が登録する「GREE(グリー)」(港区)も、
ユーザー間のメールを含めて二十四時間のパトロールをしている。
今では、大手、中堅業者の多くが、こうした監視業務に取り組んでいるという。

     ◇

 教育現場では十数年前から、生徒間のいじめや誹謗中傷の温床とされた
「学校裏サイト」などが問題化。
学校や教育委員会は独自に、または民間企業やNPOなどに委託して、
ネットパトロールを進めた。今では八割の自治体が何らかの形で監視をしている。

 トラブル減少に成果を挙げたが、人材や予算の不足で手つかずの自治体も。
昨年、文部科学省は各地の教委に対し、事例集を提示してネットパトロールを推奨。
来年度予算で、パトロールへの補助金を概算要求している。

 ただ、ネット事業者や自治体などの監視が及ばない範囲がある。
個人間で直接やりとりする無料メールアプリ、パスワード付きの一部サイトなどだ。

 「子どもたちは、自分の書いた文章を読み返す行為を省略しがち。
スマートフォンで歩きながら、勢いで送信してしまう」と、
全国三千三百の学校からネットパトロールの委託を受けている
IT関連会社「ガイアックス」(品川区)の担当者、杉之原明子さん。
「トラブルの根本は、ネット上での会話のもつれ。
規制や監視をしたからといって、人間関係が良好になるわけではない」として、
ネットマナーや理解力を身に付ける教育の充実を訴える。

 学識経験者やネット事業者、PTAなどでつくる
一般社団法人「安心ネットづくり促進協議会」は、
ネットに関する子どもの理解力を測るテスト作りに乗り出した。
リーダー役を務める千葉大教育学部の藤川大祐教授は
「ネットを使いこなす力を付けさせることは不可欠。
テスト結果を踏まえ、義務教育段階での教育目標を明らかにしたい」と話している。
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