あしたの国から 人口減社会を生きる 第7部・模索する自治体

さきがけ on the Web
------------------------------------------------------------------------------------------------
子育て全般に目配り

 秋田市は一昨年、子育て関連施策の担当部門「子ども未来部」を新設した。
母親の妊娠期から生まれた子どもの少年期までを一貫してサポートするためだ。

 若者の結婚支援策は企画調整部、子ども手当は市民生活部、
保育所は福祉保健部、幼稚園は教育委員会、乳幼児健診は保健所―。
従来は少子化対策を含めた子育て支援の担当部門が分散し過ぎており、
連携もスムーズではなかった。
市は、これらを集約した子ども未来部を子育て施策の司令塔と位置付ける。
施策のグランドデザインを描くとともに、めりはりの効いた支援の展開が狙いだ。

 子ども未来部の戸田郁夫部長は
「次世代を担う人口の減少は、地域社会を支える人材がいなくなることにつながり、
地域の衰退に直結する。市の将来ビジョンに黄信号どころか、赤信号がともってしまう。
地域の状況に応じた市独自の子育て施策を進めなければならない」と話す。

  ○―――○

 内閣府の「全国自治体の子育て支援施策に関する調査」(2013年3月)で、
秋田市は県内で唯一、先進的な取り組み、
事業などを実施している30自治体の一つに選ばれた。
その中で紹介されたのが、子ども未来部が所管する「子ども未来センター」と
「在宅子育てサポート事業」だ。

 子ども未来センターは市民協働の子育て拠点施設で、
JR秋田駅に隣接する秋田拠点センターアルヴェ内に置かれている。
ボランティアスタッフに加え、保育士、保健師、家庭相談員、子育て相談員など
専門知識を持つ職員が配置され、子育て全般に対応する体制を取っている。
昨年度は延べ約5万5千人が利用した。

 幼児向けプレールームや授乳室などを備え、
在宅で子育て中の親子を対象にしたイベント「ふれあい広場」なども定期的に開催している。
昨年8月に盛岡市から秋田市に転居した佐藤麻利さん(31)は
月1、2回、長女の陽望(ひの)ちゃん(2)と通う。
「市の子育て情報誌で知り、利用している。
保育士さんがいるので安心だし、他のお母さんたちとも知り合いになれる」

 市独自の在宅子育てサポート事業では、
未就学児のいる世帯に子ども1人につき16枚つづりの
クーポン券(1枚250~500円相当)を交付している。
果物狩りや秋田新幹線の車両見学など親子で参加する日帰り遠足、
保育施設での一時預かり、絵本との引き換えなどに利用できる。
11年度のアンケートでは77%の利用者が「満足している」と回答した。

  ○―――○
 市が08年に実施した市民意識調査によると、
20、30代の市民が「最も力を入れてほしいと思う施策」は、
「雇用」に次いで「子育て支援」が多かった。
一方、「子どもの育てやすさ」を尋ねる設問では、
「よい」「どちらかといえばよい」としたのは約2割にとどまり、
多くの市民が支援の拡充を望んでいる実態が浮かび上がった。

 支援の充実は、重い財政負担にもつながる。
子ども未来部の予算は11年の設置以来、
市の一般会計の約1割に当たる140億円前後。
地域経済の低迷と高齢化の進行に伴い、市財政が厳しさを増す中、
子育て関連予算だけを簡単に増やせる状況にはない。

 子育て支援と高齢者福祉などとのバランスをどう取っていくのか。
少子高齢社会の行政には、民意をくみ取りつつ、
政策の優先順位を付けていくことが、これまで以上に求められる。
------------------------------------------------------------------------------------------------