【宮城】どこに逃げるか自ら考えて 学校などで広がる防災教育

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 自分の命を自分で守るために必要なのは、判断力――。
「押さない」「走らない」「戻らない」といった避難のマニュアルを教えるのではなく、
状況に合わせて自らが考え、最善の避難行動をとるための防災教育が、県内でも進んでいる。
子どもたちに考える力を与える教育現場の現状と課題を探った。(鈴木絵里奈)

 7日午前9時半、塩釜市のマリンゲート塩釜から23人の小学生が、市営汽船に乗り込んだ。
行き先は桂島。まずは震災で地盤沈下した漁港や津波被害から
復旧したノリの養殖施設などを見て回り、津波の大きさを体感した。

 そして1時間半後、震災の爪痕が色濃く残る海岸に到着したところで、
指導役を務めたNPO法人「まなびのたねネットワーク」の
伊勢みゆきさん(39)はこう切り出した。

 「震度6の地震が発生し、津波警報が出ました」

 塩釜育ちの子供とは言え、離島に来たことがあるのは半数程度。
指示にとまどいながらも、「スタート」と合図されると、
それぞれが最適だと思う方向に走っていった。

 その後、近くの小学校の体育館に集まり、
「初めて来た場所では、どこが高いか分からなくて困った」
「『指定避難場所』と書いてあるところを目印に逃げた」などと、
各自が取った行動について、話し合った。

 この日、行われたのは塩釜市教育委員会が進める体験教室の一環で、
子供たちだけで遊んでいた海辺で地震が起き、津波警報が出たと想定し、
「どこに逃げるか」を考えさせる防災ワークショップだった。

 市立第一小5年の佐沢春花さん(11)は
「いつ、どこで地震があるか分からないので、
その時に一番良い方法を考えて行動したい」と話した。

 一緒に参加した母・幸恵さん(44)は
「小学校高学年なら、自分で十分判断して行動できることがわかって良かった」と、
ほっとした様子だった。

 こうした「自分で考える力」を育むための教育は、他でも見られる。
松島町立松島中では、中学生が先頭に立って
地域住民を避難誘導できるようにした防災マップを作成。
20日には、同中でマップの発表会が開かれる。

 岩手県釜石市で小中学生の防災教育に携わった
群馬大の片田敏孝教授は「災害は想定を上回るもの。
その場での判断力を磨くことが、どんな災害にも対応できる力につながる」と話し、
「今後は、マニュアルに頼らない指導ができる教員を
増やす態勢作りが必要だ」と指摘する。
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