福井の里親委託率が全国下位な訳 認知度不足、少ない登録数が要因

福井新聞
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 さまざまな事情で実の親と離れて暮らす子どもを養育する「里親制度」。
福井県内で里親と暮らすのが望ましいとされる子どもは約200人いるが、
実際に里親に預けられているのは1割にとどまる。
2011年度末現在の福井県の里親委託率10・2%(全国平均13・5%)は
全国都道府県でみると34番目と低い。
制度の社会的認知度の低さ、里親の登録が少ないことが要因とみられる。
県は里親の委託を推進するため、広報啓発や担い手の掘り起こしに力を入れている。

 県によると今年7月現在、親元で生活できず、
社会的養護を必要としている18歳未満の子どもは193人。
このうち22人が里親と一緒に暮らし、残る171人は県内に5カ所ある
児童養護施設などで生活している。

 社会的養護が必要な理由で最も多いのが、親の育児放棄や暴力といった虐待だ。
全国では理由の3割以上を占め、福井県も同水準という。
全国の児童相談所が12年度に把握した児童虐待の件数は
約6万7千件と過去最多を更新し、年々増えている。

 国は11年に「養護施設よりも里親による養育が望ましい」とするガイドラインを策定した。
養護を必要とする子どもは親の愛情に飢えているケースが多い。
子どもの健全な育成には特定の大人との愛着関係が必要で、
施設より家庭で育った方が社会に順応しやすいという。
養護が必要な子どもが増える中、里親制度の重要性は高まっている。

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 国は里親委託率を29年度までに30%に引き上げる目標を掲げるが、
福井県の委託率は低調だ。
里親の登録数そのものが伸び悩んでおり、
ここ10年は40~60世帯とほぼ横ばいの水準が続いている。

 「『里親』と聞いて何をイメージしますか。
犬や猫など動物の里親を思い浮かべる人がまだまだ多いんです」。
県総合福祉相談所で里親委託推進員を務める中井夕子さんはこう話し、
里親制度の浸透不足を指摘する。

 具体的に、法的に親子関係を結ぶ「養子縁組」と混同されるケースが目立つという。
将来的に法的な親子になれる里親の登録もできるが、
一般的な「養育里親」が育てるのは18歳未満が対象となる。

 里親になることで、金銭面での負担が強いられることを懸念する人も少なくない。
ただ、実際には里親には毎月公的な手当の支給がある。

 毎月の里親手当として養育里親に7万2千円、専門里親に12万3千円。
加えて食費や被服費など一般生活費として、
乳児は約5万5千円、乳児以外は約4万8千円が支給される。
このほか医療費や教育費などの支援もある。

 生活費の支援は、子どもの親族が育てる「親族里親」の場合にも適用されるが、
条件に当てはまるにもかかわらず手当を受け取っていないケースもあるという。

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 県は本年度、制度の周知や委託率の向上を目的に、
市民対象の説明会を初めて企画。
26日から福井、勝山、越前3市の計5カ所で、各市町と共催して開く予定だ。

 一般市民への周知は当然ながら、
市民に近い存在の各市町の職員にも制度を十分に理解してもらい、
制度の一層の浸透を図りたい考え。
説明会では制度の概要や意義の紹介し、
実際に子どもを預かった里親の体験発表などを行う。

 中井さんは「里親のニーズはより高まっている。
里親の登録数が増え、子どもにとって選択肢が広がることで、
より望ましいマッチングが一つでも増えてほしい」と期待を込める。
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