排便リズム取り戻そう 子どもの便秘


中日新聞
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 大人の悩みと思われがちな便秘だが、子どもの便秘も意外に多い。
「たかが便秘」と軽く見ていると慢性化し、心身の不調につながる恐れも。
早めに専門医に相談することが大切だ。
親子で排便について話し合い、腸にいい生活習慣を心掛けることが予防になる。

 便秘外来がある東京都立川市の松生(まついけ)クリニック。
院長の松生恒夫さんは「患者は大人がほとんどだが、
最近は親と受診する子どもが増えている」と話す。
四、五日間便が出なかったり、硬くなった便で
肛門が切れたりして受診する子どもが多い。

 松生さんが大塚製薬と共同で今年三月、小学生約五千四百人を調査したところ、
毎日排便がない子が過半数に上ることが分かった。
二、三日に一回排便があり、本人に苦痛や不快感がなければ、便秘ではない。
だが、「毎日排便がない子が、これほど多いことは問題。
親は気に掛けてほしい」と松生さん。

 二〇〇五年から排便外来を開設している、
さいたま市立病院小児外科にも、慢性便秘に苦しむ子どもたちが駆け込んでくる。

 そもそも、なぜ便秘になるのか。排便は腸と脳と神経の連携プレーといわれる。
便が直腸に届くと脳に刺激が伝わり、自律神経も働いて便を肛門へ押し出す。
このメカニズムが何らかの原因でうまくいかず、直腸に便がたまり、
排便がスムーズに起こらない状態が便秘だ。

 同科の中野美和子部長は「成長過程で改善されることもあり、
原因を特定するのは難しい。
生活リズムの乱れから来る自律神経の不調も絡んでいる」と言う。

 また、「排便への恐怖感が強まることが子どもの便秘の特徴」と中野さん。
排便時に肛門が切れるなどして痛みを経験すると、
子どもはトイレでいきむこと自体が怖くなる。
排便を我慢すると、腸がうまく働かなくなり、慢性便秘に。
さらに、この状態が続くと直腸が太く、長くなり、
通常は便意として感じる量がたまっても、便意を感じなくなる。

 子どもの心や行動に悪影響を及ぼすことも。
常におなかがすっきりせず、イライラや不快感が起きる。
食欲が低下することもある。大量の便がたまり、やっと便意を感じても、
今度は「出すのが大変」という思いから我慢してしまう。
「落ち着きのない行動を取ったり、集中力がなくなってしまう子も多い」と中野さん。

 放置すると、救急搬送されるほど激しい腹痛を起こしたり、
詰まった便の隙間から緩い便が無意識にもれる便失禁の症状が出たりする場合も。

 慢性便秘の治療法は「とにかく出すこと」と中野さん。
飲み薬やかん腸を使い、毎日または二日に一度は排便するリズムを取り戻す。
次第に腸が元に戻り、薬などに頼らなくて済むようになる。

 ただ、便秘の期間が長いほど、回復に時間がかかる。
中野さんは「五、六日排便がなければ、
排便外来などの専門医に診てもらって」と呼び掛けている。


◆朝食を食べ、時間的余裕を

 中野さんに、よい排便のための生活習慣のポイントを挙げてもらった=イラスト。

 「子どもが大きくなるにつれ、排便は親の関心から外れ、軽視されがち」と中野さん。
小学校に入るころには、子どもの間で排便が「汚い、恥ずかしい行為」として
“タブー視”されるようになる。
学校のトイレでの排便を避ける子も多いため、
「朝、家で排便できるような生活リズムを心掛けて」と中野さん。
早起きし、しっかり朝食を食べ、時間的な余裕があれば、
スムーズな排便につながりやすい。

 中野さんは親子で排便日誌をつけることも勧める。
排便があったか、排便の時間、便の状態など一日の結果を記録。
一週間でも続けると、子どもの排便リズムが順調か、便秘気味か分かるという。
中野さんは「排便は食べたものと生活の結果。
食べることと同様に、大切な習慣として認識してほしい」と話した。
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