企業内保育所、運営に壁 負担重く利用率伸びず 休廃止相次ぐ

SankeiBiz
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 仕事と家庭の両立を支援するため、企業が事業所などに設けた
無認可保育所の休廃止が相次いでいる。
現在の助成制度では運営する企業の負担が重い上、
せっかく設置しても計画通りに利用率が伸びないことも多いため、
運営を続けるハードルは高い。
ただ、保育所を設置する企業は今後も増える見込みで、
専門家からは「効果的な助成の在り方を考えるべきだ」との声も上がっている。

 ◆甘い収支見通し

 地元産の木材をふんだんに使い、木の香りが漂う園舎。
子供たちが元気に駆け回る。
菓子メーカー「たねや」(滋賀県愛荘町)が設置した
無認可保育所「おにぎり保育園」だ。

 結婚や出産による女性社員らの退職が続いたため、
離職率の低下を目指して2004年10月、本社敷地内に開設した。
快適な環境が人気となり、定員は当初の20人から増築して40人に。
現在はそれでも間に合わないほど申し込みは多い。

 それでも、経営は楽ではない。
設置の際に助成金の上限2500万円を受け取ったものの、
自社負担はその数倍。
毎年500万円近い助成を受け、利用者負担があるが、
人件費などを賄えず大幅な企業負担が生じている。
池本加奈園長は「(国の基準で)10年経過すると助成がなくなる。
今後どうなるか不安もあるが国には安心して子育てができる環境づくりを期待したい」と話す。

 設置費の半額、約320万円の助成を受けた神奈川県内の団体は、
10年10月ごろに定員10人の施設を設置した。
しかし利用する乳幼児は集まらず、1年目が4人、2年目はゼロ。
「利用者が十分集まらない」と、2年もたたずに廃止となった。

 会計検査院が1993~2011年度に企業内保育所に
国が支給した助成金720件を調べたところ、
計約8億3700万円を受け取った81施設が廃止または休止していた。
理由は主に「子供が集まらない」「(設置企業の)経営の悪化」だった。
東京都内で施設を運営する企業の担当者は
「企業も国も、利用者負担で収支がとんとんになると思っているのでは」
と見通しの甘さを指摘する。

 ◆助成金配分で工夫を

 こうした厳しい実情があっても、企業が両立支援を進める流れは変わらず、
新規参入は増え続けている。

 12年4月には助成金の支給予定額が予算の上限に達し、
一時申請の受け付けを停止する事態となった。
同年10月には支給対象となる施設の定員の要件が緩和され
「さらなる増加が見込まれる」(検査院)という。

 施設が増えれば助成金の支給総額も膨らむ。
法律では施設を廃止した企業は助成金を返還しなければならないが、
企業自体が倒産すれば返還させるのは困難だ。
検査院の調べでも、倒産で助成金が回収できないケースがあったことが判明。
税金が有効に使われていないとして、効率的な助成を求めている。

 さらに現在の支給ルールは対象遊具を厳しく限定しており、
企業サイドからは裁量の範囲が狭いとの不満も漏れる。
おにぎり保育園では設備の多くが支給対象外だったという。

 東レ経営研究所の渥美由喜研究部長は
「国は一律の基準を押しつけるのでなく、企業の裁量を拡大すべきだ。
保育の質が高く園児が多く集まる施設には、
助成金を多く配分するなどの工夫をすべきだ」としている。
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