沖縄市が子ども条例 12月議会に提案

沖縄タイムス
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 沖縄市が「こどものまち基本条例」(案)の制定を目指し、作業を進めている。
子どもの権利を保障し、子ども主体のまちづくり推進を目的とするもので、
条例化されれば県内初。市議会12月定例会に提案される予定だ。

 同条例案は、基本的人権が子どもに保障されることを定めた
国際条約「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」に基づいて検討されている。
案文には、18歳未満のすべての子どもが健やかに育つための権利があることを示し、
保護者ら大人、市は、その環境づくりに努める役割があることを明記する。

 NPO法人子どもの権利条約総合研究所によると、
子ども総合条例を制定している自治体は全国で33。
日本では1994年に同条約が批准されているが、条例化は進んでいない。

 沖縄市は、子どもの声に耳を傾け、その思いを大切にする重要性を前文に位置づけた。
市としてさまざまな取り組みを検討・実施する「決意」も盛り込む。

 虐待から守るための指針や、差別の禁止、
障がいのある子どもの権利なども明文化される予定。
施策や行動計画に子どもの権利や視点を盛り込むための「こども議会」、
有識者や地域の大人らによる「こどものまち委員会」も設置される。

 市は条例化に向けて、小中学校や保育所など子ども現場で働く
教職員へのアンケートや有識者会議などを実施してきた。

食事不十分114件 虐待可能性111人
制定向け実態調査


 「教材費が未払い」「数カ月自宅から出ていない」「制服が何日も洗われていない」-。
日ごろ子どもたちと接している教職員らから見た、子どもたちの生活困窮や引きこもり、
虐待を抱えた具体的な姿が、沖縄市の調査で明らかになった。
同種の調査を行政が行うのは県内初。
識者は「これだけ多くの具体例は興味深い。
行政の支援が必要なことが分かる」と指摘する。

 調査は同市の「こどものまち基本条例」制定に向けた実態把握の一環。
3~5月、市内の小中学校や児童館、保育所職員らに
「子どもたちが問題を抱えていると感じることがあるか」などを記述式で尋ねた。
有効回答1437人。

 健康面で「問題を抱えた子どもがいる」という回答は240人(16・7%)。
この中から、家庭環境や生活習慣について248件の記述があった。
そのうち「食事が十分でない」が114件(45・9%)で最も多く、
「コンビニ弁当で済ませている」などもあった。
次いで多いのが「病気やけががあっても受診・治療等をしない(させてもらえない)」の
93件(37・5%)。原因として「親の無関心」「経済的な理由」などが挙がった。

 「虐待を受けている可能性がある」は111人(7・7%)から回答があった。
このうち75件(67・6%)がネグレクト(育児放棄)だった。
身体的虐待は36件(32・4%)だった。
ネグレクトの内容は「洗濯していない・風呂に入れていないなど不衛生」
「長時間、児童を放置」が上位だった。

 同市は2008年に「こどものまち」宣言をしており、
調査とともに3年ごとにアクションプログラム(行動計画)を策定している。

 有識者で構成するプログラム策定委員会の委員長を務める
沖縄大学の加藤彰彦学長は「具体的な例がこれだけ多く挙がってきたことは興味深い。
沖縄市にとどまらず、他の市町村にも広がることを期待したい」とした上で、
「関係者は現状を把握しているが、
その対策についてはっきりしたビジョンが持てていない。
もっと行政の立場から支援してほしい」と指摘した。(久〓愛)
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