乳児置き去り 3年連続増加 望まぬ妊娠 貧困 孤立

東京新聞
------------------------------------------------------------------------------------------------
 「捨て子」が増えている。
病院前や路上などに置き去りにされ、親が分からない赤ちゃんら(棄児)が
二〇一〇年度から三年連続で増えていることが、
二十九日に厚生労働省が発表した調査報告書で分かった。
「救いの手がなければ、私も捨てていたかも」。
望まぬ妊娠に悩み、NPOの支援で出産した赤ちゃんを
養子に出した二人の女性は打ち明ける。 (奥野斐)

 「トイレで産み、捨てるしかないと思っていた。
自分も死んでも仕方ないと考えていた」。
茨城県のNPO法人「Babyぽけっと」が県内で運営する母子寮。
中国地方出身の女性(21)は振り返る。

 二十歳の時、性暴力の被害に遭って妊娠。
幼いころ両親が離婚、引き取られた父親とはすでに死別していた。誰も頼れなかった。

 仕事を辞め、出産費用もない。
市役所に相談したが、別の窓口を紹介されたり、
出産費用を用意するよう諭されたり。
「お金がなくて困っているのに…気力も尽きた。ここがなければ、今の自分はない」

 「現実から逃げていた」。今春、出産した女性(26)は振り返る。

 同い年の交際相手と家出。
おなかの子どもの父親であるはずの彼氏とは、
さまざまな理由から結婚できなかった。

 検診は妊娠初期に二度行ったきり、おなかを隠して棚卸しのアルバイトを続けた。
「赤ちゃんのことは考えないようにしていた」。
現実逃避して結論を先延ばししたまま、妊娠九カ月を迎えて、
ようやくNPOに駆け込んだ。「赤ちゃんを危険な目に遭わせていたと反省した」

 このNPOは望まない妊娠・出産をした女性のための母子寮の運営、
特別養子縁組の仲介・あっせんをしている。
昨年は五十四組の養子縁組が成立。
「家族がいない、家族に頼れない女性が来る。
所持金二、三千円で訪れる人がほとんど」と代表の岡田卓子(たかこ)さん(54)は話す。

 厚労省統計情報部によると、同部が〇九年度から
「福祉行政報告例」として全国の棄児数の統計を取り始めてから、増え続けている。
〇九年度二十五人、一〇年度二十八人、一一年度三十人、一二年度は四十四人だった。

 捨てられる前に、死亡している例も多い。
同省によると、心中以外の虐待死はゼロ歳児が最多で、
昨年三月までの約十年で二百十八人。
うち八十三人が出産直後に死亡、加害者の九割は実母だ。
子どもを窒息させ自宅外に遺棄した例が半数近く、
母親の75・9%が「望まぬ妊娠」だった。

 厚労省の専門委員会は七月、望まぬ妊娠についての
相談体制の充実や経済的支援、里親・養子縁組制度の周知などを
国と自治体に提言。これについてNPOの岡田さんは
「まずは女性の保護と、出産後の自立を考えた支援が必要」と訴える。
◆保護児童は 養子縁組、里親、養護施設

 東京都北区役所前の路上で9月下旬、
紙袋に入った生後間もない女児が発見されてから29日で1カ月。
女児は北児童相談所に一時保護されたが、親はいまだに見つかっていない。

 置き去りにされた児童は一般的に、病院での健康観察を経て、
各都道府県の乳児院で育つ。
厚労省によると、乳児院は都内に10カ所、全国には130カ所ある。
親が分からなかったり、保護者が育てられなかったりする
原則1歳未満の乳児が入るが、現状は1~2歳児も少なくない。

 保護者が分からない場合、子どもの名前は、
戸籍法に基づき、警察が申し出た発見場所の市区町村長が付ける。
児童相談所は、乳児院に預けられた子どもの病気の有無や発育状況を見ながら、
戸籍上も親子関係になる特別養子縁組の候補児にするか、
養育だけを担う里親に託すか、18歳までの子どもが入所できる
児童養護施設に移るかを判断する。
------------------------------------------------------------------------------------------------