動き出す「小規模保育」

yomiDr.
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制度化「認可外」からの移行に期待
 待機児童対策の切り札として国が制度化した「小規模保育」の施設が、
早い自治体では今年度中にも登場する。
国の補助を受けていない認可外保育所から移行が見込まれているが、課題もある。

 仙台市郊外にある「サン・キッズ保育園」は、
高齢者向けの介護施設に併設されたミニ保育所だ。園児は0歳から3歳の29人。
一つの保育室で全員が過ごす。

 「折り紙を真ん中で折ってね」。
クリスマスの飾りを作る3歳児のグループに保育士が声をかける隣では、
2歳児が別のテーブルで遊び、奥では0歳児がマットの上をハイハイしていた。

 自前の調理室を備え、給食も提供しているが、
園児1人当たりの面積や園庭は市内の認可保育所より狭い。
それでも、双子を預ける会社員の母親(35)は
「未熟児で生まれたので、保育士さんが少数の子どもに
丁寧に寄り添ってくれることがありがたい」と話す。

 同園は、市が独自に補助を出す「せんだい保育室」の一つ。
同市の認可保育所は定員100人以上の大規模施設が多いが、
定員10人以上で開設できるせんだい保育室は、平均40人弱だ。

 保育室は、待機児童が多い同市が2002年度から始めた。
現在は、年約14億円を投じ、64保育室で約2400人の子を預かる。

 そうした中、国は今春、待機児童解消策の目玉として
「小規模保育」の制度化を打ち出した。
待機児童が多い0~2歳児が対象で、空き店舗や公民館などを活用して
都市部でも開設しやすいため、多くの市町村が整備を検討している。

 小規模保育には、〈1〉認可保育所の分園型
〈2〉家庭的保育者が複数で行うグループ型
〈3〉両者の中間型――の3タイプがある。
国は施設の改修費などを17年度までは補助するため、
仙台市は同年度までにせんだい保育室の大半を小規模保育へ移行させる考えだ。

 サン・キッズ保育園は、全職員が保育士資格を持っており、
分園型への移行を目指している。
「これまでも保育内容に誇りを持ってきたが、『認可外』と言われた。
国の制度に位置づけられるのはうれしい」と小川あや子園長は話す。

 課題もある。最大の問題は、2歳までの小規模保育を出た後の受け皿だ。
国は、3歳になった園児が通う保育所や幼稚園などの「連携施設」の確保を求めており、
幼稚園側の協力が欠かせない。だが、私立幼稚園には抵抗感もあるようだ。

 せんだい保育室のなかには、
「連携施設が見つかるかは重要。市が橋渡ししてほしい」との声もある。


 横浜市の駅前商店街にあるマンションの1階に、
横浜市認定の家庭的保育室「ピア・ピア」がある。
2年前に開設した定員10人の小さい保育室で、園庭がないため、
晴れた日は、近くの公園や連携する認可保育所の園庭に出向いて遊ぶ。

 家庭的保育室は、同市が10年度に始めた制度で、
6~10人の0~2歳児を家庭的保育者がグループで保育する。
市内にはNPO法人などが運営する家庭的保育室が36か所。
マンションや空き店舗などを利用して開設でき、
同市の待機児童解消に大きく貢献した。

 同市で家庭的保育室を運営している株式会社やNPO法人などには、
小規模保育のグループ型への移行を検討し始めたところもあり、
「国から安定した運営費がもらえるようになるなら、安心」と歓迎する。

 その一方、「家庭的な雰囲気を変えずにできるのか不安」
「定員を増やすよう市が求めるとなると困る」などの声も聞かれる。

 厚生労働省保育課は「多くの認可外施設が移行できる仕組みを考えた。
自治体側も知恵を出して、活用を進めてほしい」と話す。(樋口郁子、写真も)

 小規模保育 認可保育所(定員20人以上)に満たない
小さい保育所(定員6~19人)で、0~2歳児が対象。
市町村が認可する保育事業として消費税財源が投入される。
土地の確保が難しい都市部や、
子どもの数が少ない過疎地での利用が見込まれている。

 家庭的保育者 市町村の委託を受け、自宅などで子どもを保育する人。
保育士か、市町村の研修を受けた人が認定される。
1人で子ども3人、補助者がいれば5人まで保育できる。
自治体により「保育ママ」などと呼ばれて広がった。
2010年度から国の制度となった。
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