土曜日の学び 学力上位県では浸透せず

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 11月2日、秋田県東成瀬村の山村開発センターで、
中学生対象に開かれた「地域学習教室」。
中学校の元英語講師の斎藤由美子さん(56)が尋ねると、
3年生から元気な声が返ってきた。

 同教室は村教委が2008年度に始めた。
8月から翌年2月まで毎月2~3回、土曜日に開催。
3年生は午前に英語と数学を計3時間、1、2年生は午後に英語を1時間半学ぶ。
今年度は村内全生徒の9割、72人が受講している。
開始1時間前にやって来た3年の鈴木匠君(15)は
「学校で教わらなかった英単語や計算法も学べる」と喜んでいた。

 全国学力テストの成績が上位の秋田県の中でも、トップクラスと言われる同村。
教育熱心な土地柄や、充実した少人数教育などが支えているというが、悩みもある。
村には高校受験のための塾がなく、英語に触れる機会も乏しい。
その対策に生まれたのが、「村営塾」とも言える同教室だ。
講師として近隣の湯沢市に住む斎藤さんと、
横手市の塾経営、斉藤直樹さん(52)を招いている。

 しかし、県内の市町村で、土曜日に同村のような学習活動を進める動きは鈍い。
文部科学省の調査によると、昨年度、全校生徒を対象に
土曜授業を実施した小中学校は全くなく、
希望者を対象に教えた小中学校も7校にとどまった。

 一方で、今年4月の全国学力テストの際に実施されたアンケートで、
「土曜日の午前は何をして過ごすことが多いか」という質問に対し、
「家で勉強や読書をしている」と答えた小学6年生は、
県内では23・7%に達し、全国平均の16・8%を上回った。

 県教委義務教育課は「学力が定着し、家庭で学習する習慣もついているため、
土曜授業を行う必要性は感じない。
学校週5日制の枠組みの中で、教育の質を高めていきたい」と話す。

 同じく全国学力テストで成績上位の福井県でも、
昨年度、土曜授業は2中学校のみ。希望者を対象に教えた
中学校が全体の15%にあたる12校あったが、小学校は2校どまりだった。
県教委は「勉強に課題がある子に対しては補習が必要だが、
子どもたちは普段から、他県に比べて量が多いと言われる宿題に取り組んでおり、
土曜授業をするほどではない」と説明する。

 学力向上に向け、各地で土曜授業が広がりを見せるが、
阿部昇・秋田大学教授(59)は「秋田、福井両県の学力が高水準なのは、
普段の授業の質が全体的に高いからだ。
教員が授業研究や研修に熱心で、教員間で指導法が共有されている。
他県でも教員のレベルアップを考えてはどうか」と指摘する。

 両県のケースは、土曜授業以外の学力向上策も検討し、
総合的に実施していく重要性を教えてくれているようだ。
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