東京NEWS2013(2)保育所不足  行政動かした母の訴え

東京新聞
------------------------------------------------------------------------------------------------
 職場復帰の時期は迫るのに、保育所が見つからない。
冷たい雨の降った二月十八日。
途方に暮れ、杉並区の保育課を訪れた女性は、
同じ境遇の母親でごった返す様子にぼうぜんとした。
外へ出ると、人だかりが。待機児童の母親らで結成した
「保育園ふやし隊@杉並」の、区への抗議集会だった。

 傘を差し、乳児を連れた母親たちが次々マイクを握る。
「妊娠中から大きなおなかで保育所回り。不安で、苦しかった」
「認可も認可外も全部断られ、ショックだ」「眠れない」。
思わず女性も飛び入り参加し、思いをぶつけた。「こんなの、おかしい!」

 この集会が、認可保育所不足を世の中に知らせるのろしとなった。
大きく報道され、議会でも取り上げられると、
区は保育施設の増設や定員枠の拡大など緊急対策を発表。
保育の相談にのる専門員を置き、
待機児童数を実態より少なく見せていた数え方も変更した。
他区でも保護者の抗議活動が起き、
認可保育所を求める動きは大きなうねりとなった。

 杉並区は来年四月までに、認可や小規模保育所による
スマート保育、保育ママなどで合わせて受け皿を九百九十四人分増やす。
区は「これだけ拡充させた年はない。オール杉並で取り組んだ」と胸を張る。

 一方で、入所希望も増加。
今月五日に締め切った認可保育所の第一次申し込み人数は、
昨年より一割、約三百人多かった。
区は「受け皿の総数は十分だが、
子どもの年齢や通える場所と合うかは別」と不安をのぞかせる。

 十月時点の待機児童数も四月より増えている。
次女(1つ)の預け先がなく、やむなく育児休業を延長中の
看護師女性(32)は「来年も入れなかったら」と焦る。
職場は常に人手不足。上司が今月出産した看護師に
「二の舞いになるな。絶対四月に帰ってこい」と厳命した、
という話を最近、同僚から聞いた。

 今月二十一日、区内でふやし隊が開いた交流会。
集まった母親、父親たちは、次々困っている状況を語った。
八カ月の長男がいる田中佳代子さん(26)は、
専門員に「夫婦ともフルタイム勤務というだけでは認可保育所に入れない。
頭一つ抜けるには認可外に預け、審査の点数を上げて」とアドバイスされた。
急いで二十カ所ほど回ったが、どこも七十~百五十人待ちだった。

 区は「状況を把握しながら、引き続き、できることはやっていく」と話す。
正念場は、しばらく続く。 (柏崎智子)

 <認可保育所不足問題>
 2月、杉並区役所前で認可保育所へ子どもが入れない母親らが抗議集会を開き、
行政不服審査法に基づく異議申し立てを集団で区へ提出した。
他区や都外にも同じ動きが広がり、保育所不足が社会問題化。
充実を打ち出す自治体が出てきたほか、
国も、2015年度末までに20万人分の受け皿を整備する
「待機児童解消加速化プラン」を発表した。
------------------------------------------------------------------------------------------------