原発事故前水準戻った 福島県里帰り出産数

福島民報
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 東京電力福島第一原発事故の影響で一時、
大幅に落ち込んだ福島県内の「里帰り出産」の件数が、
原発事故前の水準に回復したことが25日までの
県産婦人科医会の最新の調査で分かった。
昨年7月と8月の件数は、原発事故前の平成22年の同じ月を上回った。
医会は、放射線に対する理解が広がり、妊婦らの不安が和らいだことが一因とみている。
里帰り出産した母親は、古里でわが子を授かる喜びをかみしめている。
 県産婦人科医会は、出産を扱う県内の産科医療機関を対象に、
県外などの居住地から県内の実家に戻って出産する
「里帰り出産」の件数を3カ月ごとに調べている。
 昨年9月までの最新の集計は【グラフ】の通りで、23機関から回答があった。
昨年7月~9月の3カ月間の里帰り出産件数は536件で、
平成23年同期比で247件増、24年同期比で199件増となった。
原発事故前の22年7月~9月の件数は550件で、
ほぼ事故前の水準に回復している。
 特に昨年7月は184件(22年7月・183件)、8月は176件(同8月・171件)で、
原発事故前の件数を上回った。
 年間の月平均件数は、原発事故前の22年は176・1件だったが、
原発事故が起きた23年は112・8件、24年は95・6件にまで落ち込んだ。
25年は9月までの月平均が134・2件と、大幅に回復した。
 県産婦人科医会は原発事故後、
妊婦ら向けの講演会や各医療機関による個別説明などで
冷静な対応を働き掛けてきた。
医会副会長で福島市の本田クリニック産科婦人科の本田任院長(64)は
「県内の放射線の現状について、正しい知識が定着してきた。
時間の経過もあり、県内での出産に対する
妊婦や家族の不安が薄らいできている」と分析する。
 ただ、出産件数が戻り切れていない医療機関があり、
回復状況に地域的な差があるとの見方もある。
 一方、里帰り出産以外を含めた昨年9月の全出産数は857件で、
原発事故前の22年9月の1088件と比べ、231件下回っている。
 県によると、分娩(ぶんべん)に携わる県内の常勤医数は、
原発事故前の22年4月には102人だったが、今年1月現在、87人に減っている。
本田院長は「県内の産科の医療体制の強化も求められる」と指摘する。
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