【東京都】認可保育所不足さらに悪化  2万1000人 入れず

東京新聞
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 東京二十三区で今年四月に認可保育所へ入れない子どもの数は
二万一千人余りに上ることが、本紙の調査で分かった。
一年前の同じ調査より約二千二百人増えている。
認可保育所が足りない状況は、昨春から各地で起きた
保護者らの訴えで社会問題化。整備や対策に力を注いでいる自治体もあるが、
保育ニーズも伸びており、追いついていない現状が浮かび上がった。 (柏崎智子)

 認可保育所の四月入所申し込みについて各区が今月行った第一次選考の状況を調べた。
募集枠(人数)と申込者数を聞き、差し引きして入れない子どもの数を集計した。
申し込んだ子どもは全体で五万五千百十人で、
これに対し募集枠は三万三千九百九十一人分。
荒川区は募集枠が申込者数を四十八人分上回っており、
全体で二万千百六十七人が入れない計算になった。
昨年より募集枠は約三千三百人分増えたが、
申込者数の増加がそれを上回る約五千五百人になったためだ。
昨年と同じ38%が入れない。

 入れない人数が最も多いのは、世田谷区の三千二百十六人。
昨年より六百二十五人増え、入れない割合も最も高い60%となった。
次いで杉並区の千八百二十一人。
入れない割合は昨年より6ポイント下がったが、56%と依然として高い。
目黒区も半数以上が入れない。

 昨年の調査時点から最も認可保育所の定員を増やしたのは江東区。
募集人数も七百五十人分増えた。
しかし、それに匹敵する申込者の増加があり、四割以上が入れない状態だ。

 調査では申込者数から募集枠を引いたが、
実際に行政から「入れない」という不承諾通知をもらった子どもは、もっと多い場合がある。
保育所に空きがあるにもかかわらず、
申し込んだ子どもの年齢や通える範囲との不一致で、入れないことが起きるためだ。

 調査で唯一、募集枠が上回った荒川区も、空きと希望が合わなかった
二百数十人に不承諾通知を送った。
調査では入れない子どもが百二十人の葛飾区でも五百人以上が不承諾となった。

 各自治体では四月まで二次選考など調整を続け、受け入れ枠を拡大することもある。
◆用地確保が難題

 増え続ける保育ニーズに自治体側の整備が思うように進んでいない。
東日本大震災の復興に伴う資材不足の影響も生じている。

 本紙調査で認可保育所に入れない子どもの数が最多の世田谷区。
全国最多だった昨年四月の待機児童数を今年更新することは確実な状況だ。
区も手をこまぬいていたわけではないが、用地不足は深刻という。

 保育所に適した区有地はもう見当たらず、国や都に協力を呼びかけ、
一カ所の国有地に二つの保育所を建てた。
さらに、土地を見つけてきた保育事業者に賃料を補助する手法を導入し、
七カ所を整備して定員を六百人増やそうと見込んだ。
しかし、実現したのは二カ所にとどまっている。

 震災の復興需要などで建設業界に資材や作業員不足が生じている影響も出た。
四月開所予定の四カ所の認可保育所のうち、間に合うのは一カ所だけ。
区保育計画・整備支援担当課の田中耕太課長は
「例年通りのスケジュールで進めたが建設需要の高まりを読み切れなかった」と話す。

 他区では足立区の一カ所で開所が半月遅れるところがあるだけで、
世田谷の見通しが甘かったともいえる。
ただ、「入札不調で当初計画通りの時期に契約できない施設があった。
工期短縮で対応したい」(墨田区)など今後の影響を懸念する区は多い。 (小形佳奈)

<認可保育所>
 保育室の面積や配置する保育士数などについて、
国が定めた最低基準を満たし、国から補助を受ける保育施設。
一方、認可外保育所には、自治体が独自に国基準を緩めて補助する
東京都の認証保育所や市区町村の保育室のほか、
行政の補助を受けないベビーホテルなどがある。
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