カリスマ塾講師「子供をやる気にさせる方法」

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 子供が落ちこぼれ。いつまでたっても、やる気スイッチが入らない…。
そんな親御さんに、生徒の偏差値を急激に上げることで知られる
カリスマ塾講師・坪田信貴氏が“プチ講義”をしてくれました。
「ダメな人間などいません。ダメな指導者(親)がいるだけなのです」。
目からウロコ、日本一分かりやすい「やる気のお話」をどうぞ。

【言えば言うほどニートになる危険度アップ】

 大前提として人間はこんな生き物です。

①「自分には能力がある」と信じたい

②「自分が他人に影響を与えている」と確認したい

 この2つを同時に満たし、最終的に子供のやる気を奪ってしまうのが
「やればできる」という言葉なのをご存じでしょうか。

 1週間後にテストを控えているのに、子供が毎日ゲームばかりしているとしましょう。
その子に対して「やればできるんだからやりなさいよ」という親御さんが多いんですが、
この言葉、子供にはとっても都合がいい。
だって、裏を返せば「やらないからできないだけなんだよ」ということですし、
なおかつ「能力がない」とも違う。①を満たしてしまうんです。

 逆に、ゲームをやめて勉強してテストでいい点を取れないと、
能力がないことを証明することになる。
人間には失敗を回避したい性質もありますから、
親が「やればできる」と言えば言うほど、子供は延々とゲームを続けてしまいます。

 そして、そんな日が続くうちに親御さんはさすがに
「そろそろ勉強したら?」と口にする。
でも、親に言われて勉強を始めたとしたら、行為の主体は親です。
②を満たさない。その点、「ゲームを続ける」というのは
あくまで自分が主体的にやっていること。
しかも、そのことに対して周りがギャーギャー言っている…
つまり、他人に影響を与えている。
②を満たしますから、余計にゲームを続けてしまうんです。

 で、先ほども言いましたが、あくまでやらないから
勉強ができないだけで、能力は否定されない。
「やってもできない」ことがバレたくないから余計にやらない。
これを続けていくと、本当に知識の蓄積がなくなって落ちこぼれになるばかりか、
「俺もやればできるんだけどさ」と言いつつ何もしないニートになってしまいます。

【やる気にするには順序が大切】

「どうやって子供をやる気にさせるんですか?」
「やればできると思うんですが」という親御さんがいらっしゃいますが、順序が逆です。
「やる気になる→できる」ではなく「できる→やる気になる」んです。

 例えばテニス。
いくらやる気があるからといって、ラケットの持ち方も足の運び方も分からなければ、
やる気なんて起きませんよね? 
コケまくってラケットが飛んでいっちゃうような状態で
「テニス大好き!」なんていう人がいたらただの変態です(笑い)。
そうではなく、一から教えてもらい、少しずつできるようになっていけば、
勝手に「もっと上手になりたい」という欲求が生まれます。
そこで初めて「やる気」が出るのです。

 世の親御さんや先生方はそれを分かっていないから、
落ちこぼれの子供たちを救えない。
誰もがスタートはラケットの握り方なのに、
隣のコートでパーンパーンと上手に打っている他人を見てしまう。
その子が本当に知らなきゃいけないラケットの握り方も教えずに
「他の子はできてるのに、あなたは何やってるの」と言ってしまう。
 
  時々、高2なのに学力レベルが中1だっていう子がいます。
アルファベットがあやしいレベルです。
ということは、アルファベットから教えないといけないし
(学校の授業では無理かもしれません)、
その子がアルファベットを書けるようになったら成長なんです。

 でも、親御さんはそこを見ない。
「高校2年なんだからできて当然でしょ」になる。
こうなると成長したっていう実感を持てないし、やる気も出ない。
本人のレベルに合わせ、ちょっと前の段階に戻してあげて、
成長を褒めてあげるのが、やる気スイッチを入れるコツなのに…。

 ちなみにどれだけ遅れている子でも追いつくのは早い。
私のやり方では、中学校の3年間の復習をするのって2週間で終わるんです。
褒めながら急激にやらせると「俺、できんじゃん」となって、
どんどんやる気になっていきますよ。

【勉強の手順を知らない可能性あり】

「どうして宿題やらないんだ?」「なんで復習してないんだ?」と
口うるさく言う親御さんがいらっしゃいますが、
「そもそも子供が手順を知らない」というケースも非常に多いです。
だから、その子の理解度に合わせて、細かく説明してあげるのが大事。

「宿題をやれ」ではなく「家に帰ってきたらまず机に座れ」とか、
「復習をするには○○というドリルを○ページやろう」とか。
落ちこぼれている子は、具体的な指示を
もらっていないことが多いんですよ、実は。

【思い込ませましょう!】

「苦手だと思うからできないのよ!」と子供に言いたくなるときってありますよね? 
これをもっと分かりやすく説明するために私がよく使うのが「鉄板の話」。
幅30センチ、長さ5メートルの鉄板が床に敷いてあるとします。
この上を歩くことができますか? 
もちろん、お子さんは「うん」と答えるでしょう。
では、その板が、落ちたら100%死ぬ高さの2つのビルの間の“橋”になっていたとして、
その上を歩くことができますか? 
おそらく「無理」と答えるはず。
本当にやろうとしても、できないでしょう。

 面白くないですか? 
同じ直立二足歩行なのに、「失敗するかも」「死ぬかも」という
イメージを強く抱いた瞬間に、人間は身体能力が低下するんです。
「うまくいかないかも」とビビりながら
スピーチをするとうまくいかないことがありますよね? そういうことです。

 勉強も同じ。「好きだ」「できる」と思い込まないといけない。
そのためには無理にでも「数学が好きだ」などと声に出させるといいですよ。
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