多様化する託児サービス 夜間、泊まりがけ、急病対応…

東京新聞
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 埼玉県で17日、インターネット仲介のベビーシッターに預けられた
2歳児の遺体が見つかった事件は、さまざまな事情で子どもを預ける保護者に衝撃を与えた。
夜間や泊まりがけで子どもを預ける施設やサービスは多様になってきているが、
保護者からは、柔軟な対応や助成制度などの情報が
確実に届く仕組みづくりを望む声が上がる。 (福沢英里、発知恵理子、吉田瑠里)

 名古屋市の繁華街にあるビルの託児所。
四カ月から六歳の子ども五人がベビーシッター二人に踊りを披露したり、
買い物ごっこをして遊んでいた。
午後七時ごろ、四歳の長女を預けに来た母親(40)は
「三カ所目で娘に合うところに巡り合えた。
信頼できる所を選べば子どもも安心する」と話す。
シングルマザーで飲食店を営み、実家は遠い。
「母親だけで育て、昼だけでは足りないから夜も働く仲間はたくさんいる」

 運営する「ナゴヤ・ベビーシッター・サービス」(名古屋市)の
矢田京子代表取締役(58)は、
「自宅派遣でも託児所でも宿泊保育をしている。
祖父母の介護や手術という理由もある」と話す。
子どもが寝ている間も呼吸を確認。
シッターは面接の上、保育の経験者を採用することが多く、研修や実習もある。

 民間が主流の中、公的な夜間、宿泊保育もある。
名古屋市は昨年七月から、二十四時間対応の
夜間・宿泊の一時保育を認可保育所で始めたが、まだ一カ所だけ。
児童養護施設や乳児院も一時的に子どもを預かっている(ショートステイなど)ものの、
あまり利用は進んでいない。

 会員制の地域の相互援助活動「ファミリー・サポート」事業は
原則、宿泊保育をしていない所が多い。
しかし、緊急対応強化事業を行う東京都新宿区などでは柔軟な対応をしてきた。
例えば保護者の急病など緊急の相談を受けた場合、
提供会員とともに利用希望者宅を訪問し、登録してもらっている。

 それでも保護者の経済的負担は重い。
ナゴヤ・ベビーシッター・サービスの料金(税込み、別途入会金)は
シッターが一時間千三百六十五円(午後五時以降は五百二十五円増し)、
夜間託児所は月三日で九千百五十円、宿泊は二十四時間で一万五千円だ。
利用していた母親は「安心には代えられない」と話し、
支払いは月約五万円に上るという。

 「こども未来財団」(東京)はベビーシッター利用料金を助成している。
同財団に申し込んだ民間企業に勤める共働き家庭は、一回千七百円。
就学前の多胎児を育てる家庭は、双子なら一回九千円で、年度内に二回。
利用者が助成を受けられるのは八十四業者あり、
「過去五年間、ベビーシッター業務で重大な事故がない」などの基準を満たし、
外部の学識経験者による審査を経ている。
東京都調布市、千代田区などの自治体も利用料の二分の一を助成している。

 事件を受けて、登録制サイトで知り合いに託児依頼ができる
「AsMama」(アズママ、横浜市)は、安全性確保のため、
依頼する会員と支援する会員が、お互いに住所・連絡先を開示するよう変更した。

 柔軟な対応や改善を続けている現場も多いが、周知されているとは言い難い。
多様な保育事業の充実を求めるNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」も
「メルマガで配信するなど、必要な情報が必要な人に
確実に届く仕組みも整備してほしい」と訴える。
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