孤立する母親浮き彫り 保育の専門性軽視 ネット託児

神戸新聞NEXT
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 インターネットの仲介サイトを通じて預けられた男児(2)が
埼玉県のマンションの一室で遺体で見つかった事件。
見知らぬ人にわが子を預けざるをえなかった状況を、
専門家は「保育の専門性を過小評価する社会と、
育児で孤立する母親の弱さが結びついた事件」と分析し、
社会全体で子育てを支える仕組みが必要と訴える。(松本寿美子)

 仲介サイトは複数ある。
サービスの対象エリアは示されず、兵庫県内のベビーシッターが
個人で登録しているサイトもある。
シッターと利用者は、日時や値段を当事者同士でやりとり。
1時間千円以下など低料金で、緊急時にも預けられるのが特徴だ。

 「本当に切羽詰まった状況なら、仲介サイトに頼る気持ちも分かる」と
神戸市内で6歳の双子を育てる会社員の女性(41)。
夫婦共働きで、親も近くにいない。
病児保育や自治体のファミリーサポート制度、友達などに頼りしのいできた。

 仲介サイトの存在は事件で知った。
「格安で、逆に怖くなった。被害男児の母親は『大丈夫?』と
心配してくれる人もいなかったのでは」と同情する。

    ◆

 厚生労働省は実態調査に乗り出す方針だが、
5人以下を預かる場合、行政への届け出は必要ない。
兵庫県は「把握は難しい」、神戸市も「国の動きを待つ」と静観する。

 一方、シッター業者でつくる「全国保育サービス協会」(東京都)に加盟する
神戸市の会社は「仲介サイト、預かる側、いずれも安易」と批判する。

 この会社は利用料が1時間1500円を超えるが、
シッターは面接し、定期的に研修もする。
アレルギーの有無など保護者との打ち合わせを欠かさず、
「死亡事故が起きれば廃業する覚悟」という。

 同省は2015年度からシッターの事業者に認可制度を導入し、
給付金を出し利用者負担を減らす方針。
会社の担当者は「誰もが低負担で信頼できる業者に預けられる制度に」と求める。

    ◆

 子育て問題に詳しい神戸常盤大の小崎恭弘准教授(45)は
「保育の専門性が低く見られ、安易なビジネスを許している」と指摘。
乳児院でのショートステイなど、宿泊付きで利用できる制度を列挙した上で、
「情報弱者の親を支える社会のシステムがない。
介護保険のケアマネジャーのように、保育をマネジメントする人が必要」と訴える。

 兵庫教育大の名須川知子教授(58)=幼児教育=も
「どこでも起こりうる事件。もう少し母親に情報が届けられていれば
事件は防げたのではないか」と指摘する。
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