「児相だけでやり過ぎた」 検証委が県に報告書 和歌山市の児童虐待死事件

AGARA
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 和歌山市で昨年、父親が当時2歳の長男を虐待死させたとして
逮捕起訴された事件を受け、県が設置した検証委員会
(委員長=福井以恵子和歌山家庭裁判所調停委員)は
15日、県子ども・女性・障害者相談センター(中央児童相談所)の対応の問題点や
再発防止策を報告書にまとめた。
児相の調査や他機関との連携不足を指摘。
福井委員長は「児相だけでやり過ぎた。他機関と情報共有すべきだった」と強調した。

 事件は、児相が乳児院で保護していた長男を家庭復帰させて
2週間で起こったことから、その決定の手続きが問題視された。
検証委員会は大学教授や弁護士、医師ら5人で構成。
同日まで8回開き、児相や和歌山市、乳児院、医療機関などの
関係機関から聞き取りをしてまとめた。
詳細な調査や十分な協議、市への対策協議会開催要請、
第三者による専門部会に諮ることなどが足りなかったと結論付けた。

 事件前に男児は虐待によるけがで入院、
児相が男児を一時保護し、父親を警察に告発した。
しかし、起訴猶予となったことが、その後の家庭復帰の判断に影響を及ぼしたとした。
そのため、児相が適切な判断ができるよう、
起訴猶予の理由など捜査情報の共有について国に法整備を求めている。

 県には児相独自の対応指針、親子関係を再構築する基本方針を設定することを要望。
初任者への研修や、ベテラン職員が経験の浅い職員を支援する体制の整備も求めている。

 一方で児童相談所は他機関に役割を分担せずに抱え込み、
市町村や乳児院は児相に任せきりになっていた。
市町村が虐待相談を受け、措置が必要なものについては
県が対応することになっているが、実際は市町村で解決できる案件についても、
多く県に上げられているという。

 特に和歌山市からの受け付けが、児相の虐待相談件数の過半数を占めているとし、
同市の対応を「虐待リスクへの認識不足や第一義的相談窓口としての自覚に欠けていた」
「具体的な対策を設定し主体的に対応するという姿勢がなかった」と指摘。
市立児童相談所の設置を検討するよう求めた。
乳児院や医療機関に対しても児相との連携が必要だったとした。

 報告書は福井委員長が、県福祉保健部の中川伸児部長に手渡した。
中川部長は「提言に沿って、二度と同じようなことが起こらないよう、
対策を講じていきたい」と話した。



 これに関連し、県は15日、当時の子ども・女性・障害者相談センター所長、
センター次長、センター子ども相談課長を厳重注意とした。

 家庭復帰について、経験則に基づいて判断するなど
慎重さが欠けており、組織としての対応に問題があったと判断したという。
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