里親 理解広めて 養護必要な子どもたち3万人超

東京新聞
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 虐待などで親元で育てられない子をより家庭的な環境に置くため、
国は里親による養護を広げる方針を示している。
しかし、養護が必要な子のうち里親などに委ねられる割合は
依然14・8%(二〇一二年度末)と低い。
東京都や神奈川県は12・1%と平均を下回るなど自治体間でも差があり、
専門家は、行政に積極的な取り組みを促している。 (奥野斐)

 厚生労働省の資料によると、国内で社会的な養護を受ける子のうち、
主な預け先である乳児院、児童養護施設、里親に委ねられるのは
一二年度末現在で約三万六千人。
うち八割を超す三万人以上が乳児院や児童養護施設にいる。
国は本年度中に里親の割合を16%に、
十数年後には三分の一にする目標を掲げる。

 対象が三千六百六十六人と都道府県で最多の東京都では、
里親委託が四百四十三人に対し、児童養護施設や乳児院に入る子は
七倍強の三千二百二十三人に上る。
これに対し、里親の登録家庭数は四百五十前後にとどまり、委託率向上には遠い。

 都育成支援課の栗原博課長は「里親に託すことを実親が了承しないケースもある。
虐待児や発達障害児など、専門的な支援を要する子も増えている」と話す。
厚労省の調査では、全国の児童養護施設の子の半数以上が
保護される前に虐待を受けており、障害児の割合も二十年で二・五倍に増えた。

 里親委託が進まない理由について、元大阪市中央児童相談所長で、
里親でもある花園大の津崎哲郎特任教授(児童福祉論)は
「日本は戦後、長く施設での養護が進められてきた背景があり、
個別ケアの視点がなかった」と説明。
都市化で自分の子さえも育てにくくなっている社会的な要因もあるという。
「行政は、児童養護施設と周辺住民の交流機会を増やすなどして、
養護を必要とする子への理解を広める仕組みづくりをすべきだ」と話す。

 <里親等委託率>
 社会的養護を受ける子どものうち、里親や養育者の家庭で
5~6人が一緒に暮らすファミリーホームへの委託の割合。
国により事情が異なるが、欧米では50%以上の国が多く、日本は2割に届かない。
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