幼児にもある仲間外れ―対策に急ぐ関係者たち

THE WALL STREET JOURNAL
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 心理学者や教育関係者によると、幼稚園児はもとより、
もっと小さい子の間ですら、小さな友人グループを作って、
それ以外の子を意図的に締め出す行動がますます目に付くようになっており、
心理学者や教育関係者たちはそうした行動を阻止する対策を
ますます講じるようになっている。

 小学校には、特別なプログラムが出現している。
それは心理学用語でいう「関係性攻撃」を食い止める手段として、
他人を思いやることを教えるプログラムだ。
関係性攻撃とは、仲間外れにするという脅しを戦術的武器として使う攻撃だ。
子供たちは、仲間外れが起こる場合には、それに立ち向かい、
他人を助けるように指導されている。
関係性攻撃は男児と女児の両方に見受けられるものの、
女児により多く見受けられると考えられている。
女児は一般的に男児より社会的に発達しており、口も達者だからだ。

 オレゴン州ウェストリンにあるスタフォード小学校のカウンセラー、
ローラ・バーバー氏は「こうしたことが見られる年齢がますます下がっているのは、
注目に値すると思う」と述べ、
「子供たちは運動場でけんかしたことは忘れるが、
意地悪な言葉や仲間外れにされたことは忘れない」と話した。
同氏は小学校で24年間勤務している。

 関係性攻撃は比較的新しい心理学用語で、
「身体的攻撃」と区別するために考え出された。
専門家たちは、関係性攻撃が増えているとか、
低年齢化していることを示す研究はないと指摘する。
しかし、関係性攻撃への認識が高まったことで、現場の教育者の間で、
それが早期に始まっており、より多く見受けられるようになったとの認識が
強まっている可能性はある。

 関係性攻撃は通常、中学生に起こる現象だと考えられており、
小さな子供を対象とする研究は少ない。
専門家たちは、身体的攻撃よりも発見が難しいため、
大人に気付かれないことが多いと指摘する。
関係性攻撃は言語的攻撃と似ているが、仲間外れをちらつかせることなどが中心だ。
例えば、標的とする子と遊ばないことを他の子供たちに強要したり、
言われた通りにしないと誕生日会に呼ばないと脅したりするといったことだ。

 ニューヨーク州立大学バッファロー校のジェイミー・オストロフ准教授(心理学)は、
「(関係性攻撃の)効果は非常に高い。
なぜなら、子供の認知能力は限られているからだ」と述べる。
同博士は3~5歳を対象に関係性攻撃の観察研究を行ったが、
こうした行動の兆候は2歳半といった幼い子供にも見られたという。
なぜ関係性攻撃に出る傾向が強い子供とそうでない子供がいるのかは不明だ。
同博士によると、子供たちはメディアからのほか、
親や兄姉を観察することからこういった行動を学ぶ証拠があるという。

 ペンシルベニア州立大学エリー校心理学部のチャリシー・ニクソン博士によると、
関係性攻撃は身体的攻撃と違い、年を重ねるごとに増え、
中学生でピークを迎えることが多い。
ある研究によると、女児は男児よりも関係性攻撃から影響を受けやすい。
これは、女児のほうが、それが自分の社会関係にダメージを与えると考えるからだという。

 ニクソン博士の研究によると、5年生から12年生(高校3年生)までの
子供や若者の平均50%が、少なくとも毎月、
関係性攻撃を経験していることが分かった。
また、毎日ないし毎週、身体的攻撃を経験していると回答したのは約7%だった。

 専門家たちは、関係性攻撃に深く関与している子供には、
他の行動に関する問題がある可能性があると指摘する。
ニクソン博士によれば、うつや不安症などといった健康上の問題との関連もある。

 アイオワ州にあるシブリー・オチャーイーダン小学校のカウンセラー、
ローレル・クラーセン氏は、1年生の女児が
「休み時間に誰が誰と遊べるかのリスト」を作成するのを
目撃したことがあるという。

 同氏は「彼女たちは既にこの年齢で、人気者になること、
クラスのスターになること、遊び場でのスターになることを考えており、
その立場を競っている」と話した。
同氏は、男児の場合は、関係性攻撃を受けても、
それが彼らの記憶からすぐに消えてしまうようだと述べた。
そして「女児の場合、私の所に来て、
『幼稚園のとき、誰々にこんなことをされたのを覚えている』
と打ち明ける子供たちもいる」と話した。

 カンザス州立大学の発達心理学者マーク・バーネット氏は、
関係性攻撃を減らすためには、感情的に共感する、
つまり誰かの気持ちになって考えるよう促す必要があると話す。
もし子供が誰かに嫌なことをしたら、
親は「誰かにそうされたら、自分がどう思うかを想像してごらん」と言うべきだという。
同氏はまた、親や教師が読み聞かせの際、
登場人物の気持ちについて話すことを勧める。
親や教師は思いやりのある行動も率先して行う必要がある。

 バージニア州バージニアビーチに本拠を置く研修サービス会社
アキュトレインの「ミーン・ガールズ(意地悪な女の子たち)」と称するセミナーで
プレゼンターを務めるステフ・ジェンセン氏は、
小学校の教師やカウンセラーの参加が増えていると話す。
またカリフォルニア州オークランドに本拠を置く
非営利団体「ガールズ・リーダーシップ・インスティチュート」の
代表シモーネ・マリーン氏によると、同氏の団体は、親たちの要求を受けて、
幼稚園児と1年生を対象にした関係性攻撃に関するプログラムを3年前に開始した。
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