産後うつ、支援の有無影響 須坂病院、予防へ市町村と連携

信毎web
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 出産した女性が退院後、家庭で子育ての支援を得られない場合、
精神的に追い詰められ「産後うつ病」になりやすい傾向があることが、
長野県立須坂病院(須坂市)の調査で分かった。
産後うつ病は出産後の女性の1割がかかるとされる。
同病院は須坂市、上高井郡小布施町、
高山村と連携し早期発見と継続支援に努めており、
石井栄三郎小児科部長(60)が結果をまとめた。
産後うつ病予防に向け、病院と行政が連携して地域全体の状況を把握するのは
全国的にも珍しく、横浜市で開催中の日本精神神経学会で27日に発表する。

 昨年5月末から今年6月初旬までに須坂病院で出産した全ての母親285人に、
出産後5日前後の退院時と、子の1カ月健診で同じ質問票に答えてもらった。
回答を点数化し、聞き取りによる育児支援状況などの情報と比較した。

 質問票は英国で開発された「エジンバラ産後うつ病質問票」の国内版。
「物事がうまくいかないとき、自分を不必要に責めた」
「悲しくなったり、惨めになったりした」など10項目を聞く。
点数が高いほど不安が強い。

 退院時の点数を見ると、経産婦より初産婦の方が高く、
子どもに黄疸(おうだん)や発熱などが見られた場合はより高かった。
1カ月後には約6割の母親の点数が下がり、
育児に慣れるにつれ不安が軽くなった=グラフ。

 支援が必要な目安は9点以上。
1カ月後も9点を割らない人は、子どもに病気や障害があった。
また、全体の2割強は点数が上昇。
聞き取り調査を重ねてみると、9点以上の母親は、
夫や親が多忙だったり、関係が悪かったりして、
家庭内で育児を助けてもらえない場合が多かった。

 県精神保健福祉センターの小泉典章所長(57)によると、
同じ質問票は県内でも約6割の市町村で使われているが、
病院での利用は全国でもまだ少ないという。

 小児科医として1カ月健診に携わってきた石井医師は
「子どもの発育に関心を向けるあまり、これまで母親の気持ちを考えず、
もっと育児を頑張れと指導していたかもしれない」と振り返る。
「良好な親子関係を築くには、母親の精神状態を把握し、
より良い育児環境をつくるための支援が欠かせない」と話す。

 須高地域では、須坂病院で得た母親の情報を地域の保健師が共有し、
産後4カ月までに行う乳児家庭訪問でも同じ質問票で変化を追っている。

 県内では他に、信州大病院など松本地域の6病院や3市5村の助産師、
保健師、ソーシャルワーカーらがネットワーク「こどもかんふぁ」をつくり、
孤立しそうな妊産婦を早く見つけ支援できるよう、
共通の質問票を作って連携している。
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