増え続ける児童虐待通告 現場「手いっぱい」

カナロコ
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 厚木市のアパートで衰弱死後7年以上経過した男児=当時(5)=の
遺体が見つかった事件をめぐり、関係機関の対応を検証した県の
「児童虐待による死亡事例等調査検証委員会」は
27日、厚木児童相談所(児相)の対応について
「支援ケースに対する進行管理体制が不十分だった」などと結論付けた報告書をまとめた。
虐待通報件数の増加に伴う過重負担などを要因に挙げ、
児相の充実強化とともに、所在不明児のリスクを再認識し
「想定外」をも想定して対応するよう黒岩祐治知事に提言した。

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 「児童虐待の通告件数が増加する中、現場の過重負担に対し、
児相の体制の確保が十分に追い付いていない状況が大きな要因だった」。
厚木・男児衰弱死事件を検証した県の第三者委員会は、
厚木児童相談所による男児のフォローが不十分だった要因をこう指摘した。
増え続ける虐待通告に日々追われる県内の児相の担当者は、
課題が克服されていない現状に今も向き合い続けている。

 保護者の家庭訪問や施設に入所する児童との面談、警察や保育園との打ち合わせ-。
継続支援のケース対応にあたる傍ら、新たな通報が飛び込んでくる。
県内児相の男性児童福祉司は「虐待を疑う通告が次々と入るため、
予定をキャンセルして初期対応に動く。手いっぱいだ」と明かす。

 残業は毎日3~4時間。夜に子どもの記録をシステムに入力していると、
担当エリアで「子どもが泣いてる」との通告が入り、現場に駆け付けることも。
窓が開いている夏場は特に多く、到着すると泣きやんでいて、
該当家庭が特定できないことも少なくない。

 1人当たり100件弱の継続ケースを抱えるが、深刻度はさまざま。
1、2回の訪問で済む場合もあれば、子どもの一時保護から施設入所、
家庭に戻って自立するまで関わることも。
0歳から18歳までフォローを続けるケースもあるという。

 「ここ数年で通告が激増している。
早めの通報は悪いことではないが、昔は施設に足を運んで
夕食時に担当する子どもと接する時間もあった。
でも、今はない。支援する子どもと関わる時間が少ない気がする」

 今回の検証報告書は、厚木の事件の反省から
「現場の職員に過重な負担を負わせたままでは、
児童に必要な支援が行き渡らず、
救える子どもの命が守れない事態になりかねない」とし、適切な職員配置を求めた。

 児童福祉司を配置する経費は人口に応じて国の地方交付税で手当てされるが、
実際の人員配置は自治体の裁量となっている。
現在、県所管の児相の児童福祉司は人口4万6千人に1人。
報告書は「人口4万人に対し1人を配置することが望ましい」と提言した。
県に当てはめると、現在の60人から70人に増やす計算になる。

 他県では、被虐待児の一時保護といった専門的分野は児相の仕事としつつ、
泣き声を心配した近隣住民からの通報には
民間団体が対応して現場に駆け付けている例もある。
NPO法人児童虐待防止全国ネットワークの吉田恒雄理事長は
「児相が果たすべき仕事に児相の資源を絞り込んでいくことも
必要ではないか」と指摘している。
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