多彩な「学び」「遊び」提供 「学童保育」整備進む私立小

東京新聞
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 学童保育の整備計画をまとめた国の「放課後子ども総合プラン」では、
量の確保を急ぐため、学校施設の徹底活用が強調されている。
教育活動を自由にデザインできる私立小学校では、
学校の施設を活用した学童保育の開設が相次ぐ。
そうした先行事例を学ぶ、初めての「全国私立小アフタースクールフォーラム」が
先月、名古屋市内で開かれた。 (福沢英里)

 「ザクッ、ザクッ」。
直線や渦巻きが描かれた段ボールにカッターで切り込みを入れていく。
椙山(すぎやま)女学園大付属小学校(名古屋市千種区)の
学童保育「椙山女学園アフタースクール」。
夏休みの最終週、造形実験という活動に参加した子どもらが段ボールを組み合わせ、
思い思いの形に作り上げた。
講師の元愛知県児童総合センター長、田嶋茂典さん(66)は
「無駄なことを思い切りやることから遊びが生まれる」と児童の工夫する姿に笑顔を見せた。

 同校は校舎新築に合わせて昨年四月、学童保育を開設。
松原道晴教頭は「放課後を安全で快適に過ごす居場所づくりだけでなく、
女性の就労支援も目的」と話す。
預かりに加え、全児童対象の英語やダンスなどの習い事教室、
その道の達人を「市民先生」として講師に招く特別プログラムが三本の柱。
放課後は子どもたちの個性と意欲を伸ばす時間と位置付ける。

      ◇

 国は七月にまとめた放課後子ども総合プランで、
新設する学童保育の約八割を小学校内で実施する目標を掲げた。
私立小の取り組みをモデルにと、先月の全国フォーラムでは、
同付属小や埼玉県など各地の私立四校の代表らが、今後の課題などを話し合った。

 さとえ学園小(さいたま市北区)は放課後の時間も含めた
「複合型教育」という教育方針を掲げる。
通常科目を扱う学習系と、音楽や水泳など情操系のプログラムを用意。
午後五時以降は民家のような専用室で、保護者の迎えを待ちながらゆったり過ごす。
「放課後は子どもの興味や関心を受け止める場」と下平孝富校長。
プログラムはそろばんや科学教室など授業の理解を深める内容だ。
「『学ぶって楽しい』と実感してもらうのが狙い」という。

 私立小は教育理念に合わせ、学童保育も自由に取り組める強みを持つ。
ただ、その背景には少子化による児童の獲得競争などで、
環境整備を迫られている事情もある。
さとえ学園小は最寄り駅からは遠いため、
「習い事も学校で完結できるような仕組みを整えた」と報告するなど、
それぞれの事情も垣間見えた。

 また、フォーラムでは「私学だからできる」で終わらせないよう、
文部科学省地域・学校支援推進室長の鍋島豊さんが、
公立小で実施される放課後子供教室との交流や、
指導員研修の合同開催なども提案。
首都圏の私立小を中心に、学童保育の開設を支援する
NPO法人「放課後NPOアフタースクール」代表理事の平岩国泰さん(40)は、
今後の課題に運営予算を挙げる。
「私立は利用者負担で乗り切れるが、資金を集め、
費用を抑えて運用できる公立のモデルづくりが必要」と話していた。
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