小中一貫教育:不登校減少など9割が成果 文科省調査


毎日新聞
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 文部科学省は19日、全国の国公立学校の小中一貫教育に関する
初の実態調査の結果を公表した。
小中一貫教育を導入している1130事例のうち約9割が、
学力向上や不登校の減少など何らかの成果があったと回答したが、
小中の教職員間の連携の時間不足や教職員の負担増などの課題も浮かんだ。
2016年度からの小中一貫校制度化へ向け検討を進めている同省は
「小中連携の効果が示された。
課題解決も含め今後の制度設計に生かしたい」と話している。

 今年5月時点の導入状況を調べた。
小・中学校の計9年間を通じ系統的に教育課程を編成する
「小中一貫教育」を導入しているのは、全1743市区町村のうち12%の211市区町村。
導入していない市区町村のうち約3割は
「国や他の自治体の動向を注視する」としており、
制度化されれば導入が増える可能性がある。

 小中一貫教育の1130事例について、学年の区切りは現行の小学校6年、
中学校3年の「6・3制」が約7割、「4・3・2制」が約3割だった。
成果を聞いたところ、中学への進学後に環境の変化などから
不登校やいじめが増える「中1ギャップ」の緩和を挙げたのが9割に上った。
「小中学校の教職員間で互いの良さを取り入れる意識が高まった」
「小中共通の取り組みが増えた」もそれぞれ8〜9割が挙げた。

 このほか、文科省の全国学力テストや自治体独自の学力テストの結果が
「向上した」との回答も4割あった。
同省は「小中連携によって勉強や学校生活面でのギャップが解消されるだけでなく、
小学校高学年の段階で教科担任制を導入したり、
教員が小中連携を意識した授業をしたりすることで
学力向上にもつながっている」と分析する。

 一方、課題として目立ったのは、
小中連携に伴う打ち合わせ時間の増加など教職員の負担増(85%)
▽小中合同研修の時間確保(75%)−−など。
9年間一貫教育を原因とする児童・生徒の人間関係の固定化を挙げたのは35%だった。
国への要望を聞いたところ、教職員の増員(93%)が最も多く、
学校施設を整備する場合の財政措置(67%)、
教育課程・指導方法の好事例の普及(52%)が続いた。【三木陽介】

 ◇小中一貫校
 現行の学校教育法では、小・中学校、中等教育学校(中高一貫校)のような
正式な「学校」の位置づけはない。
実施校の一部は文科相が認める教育課程特例校や研究開発学校の制度を利用している。
法改正して正式な「学校」になれば、学年の区切りも設置者の自治体の判断で決められるため
「4・3・2制」「5・4制」など柔軟な運用が可能になる。
政府の教育再生実行会議が7月に「小中一貫教育学校」(仮称)の制度化を提言し、
現在、同省の諮問機関「中央教育審議会」で制度設計を議論している。
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