結核の予防 早期治療で感染拡大を防ごう

YOMIURI ONLINE
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結核を「過去の病気」と侮ってはならない。

 結核予防週間が24日から始まるのを機に、早期発見・治療の重要性を再認識したい。

 世界保健機関(WHO)によると、世界では2012年に860万人が結核に罹患りかんし、
130万人が死亡した。日本でも毎年、約2万人が発病し、2000人以上が亡くなっている。

 結核菌は肺に炎症を引き起こし、せきやくしゃみで人から人に感染する。
日本ではかつて「亡国病」と恐れられ、戦後間もない1950年は12万人が死亡した。

 治療薬の開発や衛生状態の向上とともに、脅威は薄れた。
それでも、2013年時点の人口10万人に対する新規患者数(罹患率)は16人で、
米国の5倍に上る。

 厚生労働省や結核予防会などは7月に行動計画を策定し、
20年までに罹患率を10人以下に抑えるという目標を掲げた。

 その達成のために、まず必要なのは、高齢者対策の拡充だ。
若い頃に感染し、休眠状態にあった結核菌が、
免疫力の衰えや糖尿病などにより活発化し、発病する患者が増えている。
高齢者施設での集団感染も起きている。

 高齢者は、せきやたんなどの典型的な症状が表れないケースも多い。
発見の遅れは、重症化や感染の拡大につながる。
体重減少や微熱も結核の兆候だ。

 早期に胸部エックス線検査などを受けることが大切である。

 生活困窮者の発病も多い。
大阪市は、ホームレスの人を対象に、
無料検診や看護師による訪問服薬支援を重点的に実施し、
罹患率を10年間でほぼ半減させた。

 インターネットカフェに長期滞在していた患者から、
若者に感染が広がった例もある。
身近な場所にも感染の危険は潜んでいる。

 結核の流行国から来日した外国人の患者も増えている。
米英では入国前の検査を実施している。日本でも今後の検討課題だろう。

 懸念されるのは、多剤耐性結核の患者の増加だ。
通常の治療薬が効かず、死亡率が高い。世界で45万人が罹患している。

 日本では、結核患者の1%未満にとどまっているが、
海外との往来の活発化により、感染拡大の危険性は常にある。

 耐性菌に効く日本製の新薬が今年、欧州と国内で承認された。
世界の結核対策に役立てたい。

 乳児用の予防ワクチンとして、BCGが普及しているが、
効果は10~15年で失われる。成人用ワクチンの開発も急ぐ必要がある。
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