<天職ですか> 保育カウンセラー・山下直樹さん

中日新聞
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 「おじちゃん、きょう休みなの」「休みじゃないよ。僕は先生なんだ」。
保育カウンセラーとして、月一回訪れる東京YWCAまきば保育園(東京都調布市)。
広い園庭で園児と触れ合いつつ、事前に聞いた「発達の遅れの気になる子」にも、
頻繁に目を向ける。体の動かし方や他の園児との関わり方を見て、
その子の状態を把握するためだ。

 昼以降は担任の保育士と個別に面談。
園での生活や遊びで起きていること、言葉や行動の変化を聞き、
親子とどう接していくか助言する。
例えば室内で走り回る子。
「体を使ってたくさん遊ぶと、そういう行動は減ってくる。
ロープ登りやタイヤのブランコはとてもいい」と勧めた。

 スクールカウンセラーの保育園・幼稚園版で、
第三者として現場に入り、親からも相談を受ける。
「子ども本人が困っているという視点を持つことが一番大切。
そのために何ができるか、保育士や親と一緒に考えていきたい」

 名古屋市出身。大学で障害児教育を学んだ後、
スイスで障害児が入所する治療教育施設で働きながら、
教育者養成ゼミナールで知識を深めた。
帰国して、十年前から東京都内で発達の相談を受けるように。
カウンセラーを始めたのはその翌年。神奈川県内の幼稚園から「気になる子」が増え、
他の園児をたたく、席に座っていられないなど“学級崩壊”状態だとの相談を受けた。

 ある年中の男の子は椅子を倒して歩き、注意されると他の園児を突き飛ばした。
「家でそんな様子はない」と母親は言うが、
カウンセリングを続ける中で検査を受けると決断。
どんな形で就学するのか、話し合いにもつながった。

 「他の子とコミュニケーションを取るようになる三歳以降に症状が出やすいのに、
保育園や幼稚園を支える仕組みがない」と憂う。

 一昨年からは名古屋短大保育科助教も務める。
国は保育カウンセラー導入を検討し始めた段階で、まだ取り入れる園は少ない。
「保育者も親も自分のやり方が正しいか不安を持っている。
一緒に考えることで保育者や親が自信を持つと、子どもが生き生きしてくるんです」
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