大阪市児相:虐待急増、保護施設満員 一般家庭に100人

毎日新聞
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 保護者らから虐待を受け、「大阪市こども相談センター」(児童相談所、中央区)に
一時保護される子どもが急増している。
2008年度は延べ195人だったが、13年度は延べ722人と過去最多となった。
保護施設は満員で、昨年度は一般家庭約50世帯に
延べ約100人の子どもを委託する異例の事態になった。
市は今年4月、新たな保護施設1カ所を開設したが、
それでも満員になっており、現場からは更なる
一時保護施設の増設を求める声が上がっている。

 センターは児童福祉法に基づき、虐待を受けるなどした
2歳以上18歳未満の子どもを2カ月をめどに一時保護する。
住民からの通報をもとにセンターの職員が保護が必要だと判断したり、
警察からの依頼で保護したりするケースが多い。
非行や家庭内暴力を振るう子どもらも入所している。

 虐待による大阪市での一時保護数は年々増加。
70人が入所できる中央区の保護施設1カ所では収まりきらなくなり、
今年、30人が入居できる施設を市南部に新たに設けた。

 児童福祉法では保護の委託先について明確な規定はなく、
保護施設が満員の場合は
通常、児童養護施設や障害児施設、里親認定された家庭などに委託する。
しかし、12年度以降はこれらの施設も満員で委託できない状態に。
背景には虐待事件が相次ぎ、市民の間に虐待への認識が広まり、
通報が増えたことがあるとみられる。

 センターは12年8月、受け入れに協力してくれる家庭を募り、
約50世帯が協力を申し出た。
12年度には延べ約50人、13年度は延べ約100人が一般家庭で保護された。
今年度は新たな施設ができたため、昨年度より減少傾向にあるが、
4〜9月に延べ34人が一般家庭に委託されている。

 センターの阪脇裕二所長は「保護施設で子どもを観察した方が、
精神状態などを細かく把握できるが、空きがない。
保護施設の増設が必要だ」と明かす。
厚生労働省雇用均等・児童家庭局の担当者は
「これだけの規模で一般家庭に委託する例は聞いたことがない」と話す。

 厚労省によると、13年度に虐待が疑われ、
市こども相談センターへ通報があったのは3193件で、
児相への件数としては政令市で全国ワースト2。
3724件で最多の横浜市には一時保護施設が4カ所(定員161人)あり、
13年度は延べ577人を一時保護したが、一般家庭への委託はなかった。

 一時保護に詳しい西南学院大の安部計彦(かずひこ)教授(児童福祉学)は
「虐待を受けた子どもは特に、保護施設でしっかりと精神状態を観察することが必要だ。
保護施設を増設すべきだ」と話している。【松井聡】
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