子どもの声=騒音? トラブル増え、都条例改正へ

東京新聞
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 騒音防止を定めた東京都の「環境確保条例」について、
現在は規制対象になっている子どもの声を対象から除外するなど
見直しの検討を、都が始めた。
都内の自治体と協議し、早ければ来春に条例を改正する。
保育所などの子どもの声を「騒音」と扱うことに、
都議会や自治体から違和感を指摘する声が出ていた。 (松村裕子)

 「何人(なんぴと)も規制基準を超える騒音を発生させてはならない」。
条例の条文はこう明記し、子どもの声も規制対象に含まれると解釈されてきた。

 見直しの背景には近年、各地で「子どもの声がうるさい」と
住民が保育所建設に反対するケースが増えたことがある。
中には騒音差し止め訴訟に発展した例もあり、
今年三月には都議が「子どもの声を工場騒音と同列に扱うのはおかしい」と都に指摘。
これを受け都は三~九月、都内六十二区市町村にアンケートした。

 結果、七割が「子どもの声に関して住民から苦情を受けた」と答え、
二自治体は保育施設の建設が住民の反対で延期や中止になったとした。
一方で、子どもの声を規制対象外とするか、
規制基準を緩和すべきだとの意見は四十自治体に上った。
「何人も」としている条例が、保育所を訴える根拠とされる可能性があるためだ。

 声の規制が子どもの健全な発達を妨げる恐れもあり、
都は規制の対象外とするか規制基準を緩和する条例改正を検討することにした。
早ければ来年二月の都議会に条例改正案を出し、来年度から施行する。
一方で「子どもの声であっても、受忍限度を超えるような場合は対応が必要」とし、
実際に声に悩まされる住民への配慮も盛り込む考えだ。

 子どもの声をめぐっては、練馬区で二〇一二年に、
私立保育所の近隣住民が「平穏に生活する権利を侵害された」と、
騒音差し止めや慰謝料を求めて提訴。
神戸市でも今年、住民が保育所の運営者を相手に、
防音設備設置などを求める訴訟を起こした。

 横浜市副市長として保育施設の充実などに取り組んだ
前田正子・甲南大教授(社会保障論)は
「子どもの声を工場と同じ騒音として扱うのは、
思い切り遊ぶ子どもの権利を大人が奪うことになる。
保育所側も遊ぶ時間などのルールを決めて住民に説明し、
譲り合って地域と共存を探る必要がある」と話している。

<東京都の環境確保条例>
 1969年にできた公害防止条例を改正し、2000年に制定。
騒音のほか排ガスや水質汚染の防止などを規定している。
「何人も規制基準を超える騒音を発生させてはならない」との条文は、
69年の条例当時のまま残した。
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