入院のみんな笑顔にな~れ 首都圏4病院、子どもケア連携

東京新聞
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 聖マリアンナ医科大病院(川崎市宮前区)など
首都圏の4病院の医師らがつくるNPO法人「キッズアートプロジェクト」(KAP)が、
小児病棟で長く過ごす子どもたちのためのワークショップを開き、
専用のホームページで絵を展示している。
願いは一つ、「子どもたちにたくさんの笑顔を」。
病院が連携して子どもたちに楽しみを提供する試みは珍しいという。 (平木友見子)

 「レゴランドに行きたい!!」

 たくみ君(6つ)は生まれた時に血友病、四歳で脳腫瘍が見つかり、
聖マリアンナ医大病院の小児病棟に入院している。
組み立てブロック玩具「レゴ」の大ファンで、
つらい手術やリハビリもこの玩具があるから耐えてきた。
腫瘍が大きくなり、視力が落ち、右手が動かなくなってしまったたくみ君の夢をかなえようと、
主治医の長江千愛さんは九月、レゴジャパンに一通のメールを送った。
「病棟訪問をしてもらえませんか」
 十月十五日。
同社の社員ら四人が、大きな袋いっぱいのブロック玩具を携えて訪れた。
たくみ君が母親と作ったのは飛行機。
動く左手で握りしめ満面の笑みのたくみ君を、KAPの医師たちは優しく見つめた。

 ◇ 

 同病院の小児病棟には常時、ゼロ~十六歳の患者が四十~五十人入院している。
白血病や腎臓病で長期入院を余儀なくされる子も多い。
重い病気の子が面会できるのは両親のみ。
「病気だけでなく孤独や疎外感とも戦わなければならない」と、
小児科医でKAP理事の麻生健太郎さん(47)は説明する。

 麻生さんは二〇〇七~〇九年、小児病院の実情を見るためカナダへ留学した。
映画館やビリヤード場との連携、ボランティアによる読み聞かせなど地域と病院の距離が近く、
子どもたちの希望を尊重する病院環境を目の当たりにした。

 同僚で、米国の病院に留学経験のあった渡辺嘉行さん
(現・総合川崎臨港病院院長)に相談し、
聖マリアンナ医大医師らが中心となり筑波大付属病院(茨城県つくば市)、
東京慈恵会医科大付属病院(東京都港区)、
済生会横浜市東部病院(横浜市鶴見区)の医師と一年半前にKAPの活動を始めた。

 最初は絵を描いてもらうだけだったが、建築家や音楽家、企業へとボランティアの輪が広がり、
月一回ほど、版画や紙粘土細工などのイベントを開いたり、
子どもたちのための曲を作ってもらうように。
絵を展示したホームページにも、たくさんの感想のメッセージが寄せられる。

 「『リハビリ頑張って』『すてきな絵ですね』というメッセージに、
子どもたちは治療への勇気や生活のはりをもらっている。
活動を知ってもらい、いろいろな病院に広がっていけば」。麻生さんは願う。

 活動を広く知ってもらうため、PR用のバッジを作った。
一個二百円で販売し、売上金は小児医療環境の改善に充てている。
問い合わせは、KAP事務局=電044(233)9336=へ。
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