児童虐待相談10年で3倍 職員と保護者トラブルも 静岡

産経ニュース
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 昨年度県内の7児童相談所(児相)に寄せられた
児童虐待の相談件数は過去最多の1725件となり、10年前の約3倍にまで急増している。
児童の保護をめぐって保護者とトラブルになるケースもあり、
児相の負担は重くなる一方。
関係者からは「児相が児童のサポートに専念できなくなっている」と懸念の声が上がっている。

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 県こども家庭課によると、昨年度の県内の児童虐待相談は1725件で、
前年度から84件増加。相談の種別では、身体的虐待586件
▽心理的虐待555件▽ネグレクト(育児放棄)550件▽性的虐待34件-の順となっている。
虐待の被害に遭う児童は小学生が最も多く、
就学前の児童では心理的虐待やネグレクトが目立つ一方、
小学生以上では身体的虐待が上回った。

 虐待の相談件数は全国的にも右肩上がりで推移しており、
同課の担当者は「子供の前で配偶者などに暴力を振るう
『面前DV(ドメスティックバイオレンス)』も虐待として認知されるなど、
児童虐待に関する理解が深まった」と分析している。

 児童が死亡するなど深刻な虐待を防ごうと、
県内の児相はこれまで、警察へ緊急通報を行うマニュアルの策定や、
県警OBの配置といった警察との連係強化を進めてきた。
25日には、藤枝市の県警察学校で児童虐待が疑われる家庭への
立ち入り調査の合同訓練を実施。
参加した児相職員からは「児童の安全確保が第一だが、
最初に強硬な手段を取ると保護者との関係を築くのが難しくなる」
といった悩みも聞かれた。

 平成20年に改正施行された児童虐待防止法では、
児相の立ち入り調査や保護者の面会制限などが強化されたが、
児相と保護者がトラブルになるケースも発生。
今月13日には、県中央児相が硬膜下血腫と診断された男児を一時保護したことに対し、
両親が「きちんと調査もせず、虐待の疑いだけで子供を親から引き離した」
と主張して男児の引き渡しを求める人身保護請求を静岡地裁に申し立てた。
請求は20日付で却下されたが、
両親らは翌21日に県に対し男児の引き渡しや
慰謝料などを求める行政訴訟を起こしている。

 増加に歯止めがかからない児童虐待への対応について、
県こども家庭課の森茂雄参事は「児童の心身のケアといった、
児相の根幹となる業務にも影響が出ている。
初動対応を警察と協力するなど、さらなる取り組みが必要だ」と語った。
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