渋谷・こどもの城 1日で閉館 テーマパークに押され

東京新聞
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 全国で唯一の国立児童館として子どもの遊びを支援してきた
「こどもの城」(東京都渋谷区)が二月一日、三十年の歴史に幕を閉じる。
乳幼児から高校生までを対象に、さまざまな遊びのプログラムを開発したノウハウは、
全国の児童館が手本にし、広がっていった。
親子二代で通った利用者も多く、閉館を惜しむ声が上がっている。

 都心が冷え込んだ一月中旬、三階の造形スタジオで、
子どもたちがはさみで節分用の小さな鬼を作っていた。
月に一度は訪れるという東京都目黒区の幼稚園児松崎駿太ちゃん(5つ)は
「この前はヒツジを作ったんだ」と楽しそうに手を動かす。

 母親の香さん(37)は「ここは何かを作ったり、遊んだり、
いろいろな体験ができる場所。子どもたちも来るのを楽しみにしていた」
と閉館を残念がった。

 音楽や体育など専門の知識を身に付けたスタッフが常駐しているのが特徴で、
編み出された遊びのプログラムは三千五百以上。
派遣された講師によって、その多くが各地の児童館に伝えられ、
結んだタオルをボールに見立てる「身近な道具でスポーツあそび」など、
現在でも親しまれている遊びは多い。

 一九八五年の開館以降、併設する劇場なども含めて約二千八百万人が訪れた。
二〇一三年度の利用者は約八十万人。
皇太子ご夫妻の長女愛子さま(13)が幼稚園に入る前の一年間、
週二回ほど通ったことでも知られる。

 閉館が発表されたのは一二年九月。厚生労働省は、
社会情勢が変わり民間のテーマパークなど子どもの遊び場が増えたことや、
施設の老朽化を理由に「役割を終えた」と判断した。
閉館後、施設は売却する方針だ。

 城西国際大の羽崎泰男教授(教育学)は
「テーマパークが流行の玩具やデジタルな世界を楽しむ場なら、
こどもの城はスタッフが培った経験をもとに遊ぶアナログの世界。
児童館の象徴のような存在だった。閉館は時代の流れだが、
こどもの城のようなアナログさも、子どもの成長には欠かせないものだ」と話した。

 <こどもの城> 
1985年、児童の健全育成を目的に開館した国立総合児童センター。
約1万平方メートルの敷地に体育室やプール、造形スタジオなどがあり、
劇場も併設されている。
現在は国の委託を受けた公益財団法人「児童育成協会」が運営。
入場料は3歳以上400円、18歳以上500円。
体育室やプレイホールなどの遊び場は2月1日が最終日で、
講座なども3月末までに全て終了する。
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