スマホ:学校公認でネットいじめなくなる 高知の私立高

毎日新聞
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 急速に普及するスマートフォンへの「依存」や
無料通信アプリ「LINE(ライン)」でのいじめなどが指摘される中、
高知市の私立高知中央高校が、授業や安否確認などでの
スマホの積極活用に力を入れている。
正しい使い方を指導することでネットリテラシー(活用能力)も伸び、
個人情報の無断公開はこの1年で10分の1程度に激減。
いじめや中傷も起きておらず、「正しくつながろう」という取り組みが実を結びつつあるという。
【最上和喜】

 「大丈夫ですか」。昨年10月、高知県内が大型の台風19号に襲われた朝、
生徒たちに担任からラインのメッセージが届いた。
「バスが動かず学校に行けません」「自宅待機中」。
約1100人の生徒のうち約98%がスマホを持っており、
電話連絡はわずかの生徒で済むため素早く状況を把握できた。

 南海トラフ巨大地震の津波を想定した避難訓練では、
グラウンドに集合した生徒数を担任がラインで学年主任に報告。
12分で全員の点呼を取り終えた。

 授業では、国語で辞書代わりに使う他、
地理ではグーグルアース(バーチャル地球儀ソフト)で「現地」の様子を観察。
落とし物の連絡もすぐ全員に行き渡るので
「持ち主はほぼ100%見つかる」(同校)という。

 生徒や教職員は、部活動や学級単位で分けた約70のグループのいずれかに所属。
全てのグループを管理するアカウント(アクセスする権利)があり、
職員が監視している。

 だが、交流サイト(SNS)の匿名利用はあえて禁止していない。
複数のSNSを匿名で利用しても、
学校が把握しているハンドルネーム(ネット上で用いる別名)1種類を
使い回している場合が多いので、逆に発見しやすくなるからだ。
不用意な使い方をすれば教職員が指導する。

 取り組みの成果は数字に表れ始めた。
自分や友人の連絡先など個人情報の無断公開は2013年、
毎月40〜60件あったが少しずつ減少。
14年5月以降は月5件以下で推移しており、
ネットでのいじめや中傷なども同年4月から起きていない。

 高校でスマホを使い始めた松本紗弥さん(3年)は
「スマホは便利だが、安易にネットに情報をさらせば
他人を傷付ける凶器にもなると知った」と話す。

 近森正久理事長は「隠れて連絡を取り合おうとしていた生徒たちも、
最後は自分の投稿に多くの反応がある校内のネットワークに戻ってくる。
ネットの世界は危険だからこそ、
正しくつながることができる場所を用意してあげようという考え方だ」と話している。

◇珍しく興味深い−−スマホと子供の関係に詳しい
竹内和雄・兵庫県立大准教授(生徒指導論)の話

 学校が積極的にスマホやラインを活用している例は全国的に見ても珍しく、興味深い。
こうした例では適切な教育が必須。
公認することで教師の目線が生徒に近付き、
指導しやすくなるメリットがある。
ただ、両者が適切な距離を取りつつ使用していくことが大切だ。
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