自然派子育て地域の魅力 「森のようちえん」じわり3園

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◇U・Iターン呼び水/小豆島町では助成事業

 「見て、落ち葉に足が埋まっちゃった」「おっきなドングリ見つけたよ」。
今月16日、綾川町小野の山道に子供たちの歓声が響いた。
昨年4月に開園した「こどもえん あさの実」の7人。
木の棒で落ち葉をつついたり、木に登ったり、遊び方は自由だ。

 園長は、かつて神奈川県でアパレル関係の仕事をしていた三好恵子さん(40)。
東日本大震災の後、夫の古里の綾川町に移り住んだ。
それまで長女(4)を同県内の森のようちえんに通わせており、
同じような環境で育てたいと、認可外保育施設として「あさの実」を自ら開いた。

 平屋の園舎は、夫の実家を改装して用意。トイレや給食に使うが、
それ以外はほぼ毎日、雨の日もカッパを着て周辺の野山に出かける。
保育士を含む2人以上のスタッフが見守る。

 その日、何をして過ごすかを決めるのは子供たちだ。
「自分で自然の豊かさ、面白さ、怖さを知り、
考えて動く力を伸ばしたい」と三好さんは考えている。

 長女(3)を預ける山崎郁枝さん(34)は東京出身。
子育て雑誌で「あさの実」を知り、今月初めに綾川町に引っ越してきた。
「家に帰ってから森での体験をうれしそうに話す娘を見ると、
来て良かったと思う」とほほ笑んだ。

 ホームページなどを通じて見学の問い合わせが相次ぎ、
4月から園児は12人に増える。
三好さんは「移住の相談を持ちかけられることもあり、
子育て世代が増えて地域が元気になれば」と期待する。

 小豆島町にある「海と山のしましまようちえん」は、
保育士資格のある保護者らが子供たちを見守る自主保育サークルとして、
2011年に誕生した。
同町の「子育ち応援モデル事業」に選ばれ、
助成を受けながら週3日ほど山や海で活動している。

 参加する親子約10組の大半は、首都圏や関西からU・Iターンしてきた。
千葉県から来た内田絢子さん(37)は
「子育て環境に豊かな自然を求める親は少なくない。
魅力ある保育の場は、移住を決めるポイントの一つになった」と話す。

 県内で最も早く09年にできた「お山歩隊」(高松市亀田町)も自主保育サークル。
市南部の森林公園周辺が活動の中心で、県外出身者の子供ら約10人が通う。

 08年に設立された「森のようちえん全国ネットワーク」には現在、約150団体が加盟。
鳥取県や長野県は、活動時間や場所などの基準を設け、
継続的に支援する認証制度をつくる方針だ。

 鳥取県は今年度、モデル事業として5園に運営費を補助。
担当者は「森のようちえんが移住の決め手になった、
との声も寄せられており、そうした効果にも期待している」と話す。

 一方、同ネットワークの藁谷わらがい久雄事務局長は
「ヨーロッパのように専門的な指導者を養成していくことが今後の課題」としている。

森のようちえん 1950年代にデンマークの母親が始めたとされる
乳幼児の保育、教育法。自然の中で活動し、大人は見守る姿勢を重視する。
国内では2000年頃から普及。認可外保育施設や保護者のサークルのほか、
認可保育所や幼稚園が同様の活動に取り組む例もある。
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