大和・プール事故訴訟:管理責任どう判断 31日判決



カナロコ
------------------------------------------------------------------------------------------------
 大和市の私立幼稚園の屋内プールで2011年7月、
男児=当時(3)=が溺死した事故で、業務上過失致死罪に問われた
当時の幼稚園園長に対する判決が31日、横浜地裁で言い渡される。
現場で監視に当たった元教諭は有罪が確定した一方、元園長は無罪を主張。
園トップの管理責任を地裁がどう判断するか、注目が集まっている。

 事故は11年7月11日、園のプール活動中に発生。
当時の担任教諭(24)と園長(67)は13年8月、
ともに業務上過失致死罪で在宅起訴された。

 事故時にプールの監視に当たっていた元教諭に対し、
横浜地裁は昨年3月、「園児の行動を注視する義務があるのに怠った」として
求刑通り罰金50万円を言い渡し、確定した。
これに対し、昨年7月に始まった元園長の裁判では、
事故前の元教諭に対する指導と、当時の監視態勢をめぐり、
管理責任者だった元園長に過失があったかが焦点となった。

 検察側は「プール活動中の具体的な注意事項を教えなかったほか、
新任だった元教諭1人に監視を任せており、
溺水事故の危険性を予測できた」と主張。
注意義務はより重いとして、元教諭を上回る罰金100万円を求刑した。

 一方、元園長側は「子どもから目を離してはいけないことは日常的に教えていた」と説明。
また、「プール活動について、複数での監視を義務付けた法令はない」と述べ、
「検察側が主張する義務違反はない」として無罪を求めている。

 このほか、男児がいつ溺れたかなどについても、双方が主張を対立させている。

◆元園長の過失をめぐる主な争点

◇事故は予測できたか

(検察側の主張)プール活動の安全管理に関する
県の通知があったことから、予測できた

(弁護側の主張)事故以前にプール活動中の水難事故はなく、予測できなかった

◇事故は回避できたか

(検察側の主張)複数で監視し、新任の担任教諭に
園児の行動に注意する方法を教えていれば避けられた

(弁護側の主張)子どもから目を離さないことを徹底、
複数監視の義務もなく、回避するための義務違反はなかった

◇対策が進む一歩に 父「抑止力を」

 望むのは、再発防止だ。なのに事故から3年8カ月たっても、
息子がいつ溺れたのかさえ主張が食い違う-。
私立幼稚園のプールで溺死した男児の父親(40)=大和市鶴間1丁目=は、
もどかしい思いを募らせながら、公判を見守ってきた。

 元園長の裁判は、事故から3年後にようやく始まった。
ただ、検察側と弁護側が全面的に対立し、再発防止への教訓を得ようにも、
その前に真相解明すら十分に果たされていない。

 事故をめぐっては、暮らしに関わる事故の原因を調べる
消費者安全調査委員会(消費者事故調)も調査。
昨年6月に最終報告書が公表されたが、現場や監督官庁への提言は勧告にとどまった。
その約1カ月後にも、京都市内の保育園プールで
水遊び中の男児=当時(4)=が亡くなる事故が発生。
父親は「提言に強制力がないから、対策が進まない。
息子の事故と同じことが繰り返されている」と悔しがる。

 だからこそ、元園長の裁判での判決に込める願いは大きい。
「自分たちと同じように苦しむ遺族を二度と生まないよう、
抑止力となるような判決を出してほしい」

 子どもの命を預かる立場として、刑事裁判の場で管理者の責任が認められることが、
全国の現場で対策が進む一歩になると思っている。
------------------------------------------------------------------------------------------------