「子ども・子育て支援新制度」開始 待機児童解消・小規模保育に期待


産経ニュース
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「子ども・子育て支援新制度」が4月、スタートした。保育所に入れない待機児童の解消のため、地域事情に応じた保育施設などが新たに開所している。新制度により、誰もが子育てしやすい社会が実現するのか-。(佐藤好美、村島有紀、加納裕子)


 「中に何が入ってるかな?」「イチゴ!」
 3月末、神戸市西区の小規模保育施設「YMCAちとせ保育ルーム」。複合ビルの1階にある約100平方メートルの保育室で保育士4人が見守る中、1、2歳児13人がイチゴ大福を食べていた。
 小規模保育施設は新たに始まった3歳未満を対象にした「地域型保育事業」の一つ。定員は6~19人で、用地の確保が難しい都市部でも、利便性が良くニーズの高い場所に短い準備期間で整備できる。
 小規模保育施設はこれまで、認可外保育施設の位置づけで、行政の目が行き届きにくかった。しかし、新制度では市区町村が、地域の事情に応じて認可できる。保育士の配置基準は、認可保育所よりも1人多く、家庭的できめ細かい保育が特徴だ。
 YMCAちとせ保育ルームは昨年4月に開設され、1歳児7人と2歳児7人が通った。認可保育所に入れなかったため、次男(3)をYMCAちとせ保育ルームに通わせたパート女性(34)は「先生が一人一人に目を向けてくれ、安心して預けられた」と振り返る。
 神戸市では、新制度開始に先駆けて平成26年度、小規模保育施設37カ所を独自に運営。27年度は計61カ所を認可した。同市の担当者は「待機児童解消の切り札として積極的に進めた」と振り返る。
 地域型には小規模保育以外に、5人以下を預かる「家庭的保育」、企業が従業員用に開設する「事業所内保育」、子供の自宅に保育者を派遣する「居宅訪問型保育」がある。
 3歳未満児を保育所で預かる場合、3歳以上より多くの保育士を配置する必要があるため、定員を増やすのが難しい。一方、子供が幼いうちから働き始める親は増えている。待機児童解消に向け、3歳未満を対象とした地域型の弾力的な運用が求められている。
 ■3歳未満で増える選択肢 自治体が必要性認定
 「子ども・子育て支援新制度」への移行で大きく変わったのは、3歳未満児の預け先の選択肢が増えた点だ。
 従来の幼稚園、保育所、認定こども園に加えて3歳未満を対象とする「地域型保育」を新設。かつて認可外だった小規模保育に市町村が関わり、安心して預けられる保育施設が増えた。
 新制度では、幼稚園(一部私立を除く)、認定こども園、保育所などの施設型サービスを使う乳幼児を、保育の必要性に応じて1~3号に区分する。「1号」は、3歳以上で両親のどちらかが専業主婦(夫)など保育の必要がない場合。両親が共働きでも幼稚園を希望する場合は1号とされる。共働きなどで「保育の必要性がある」と自治体に認められた子供は3歳以上だと「2号」、3歳未満は「3号」となる。「YMCAちとせ保育ルーム」のような地域型保育を利用する際は3号に認定される必要がある。
 新制度開始にあたり、国は区分と所得に応じた利用者負担の上限を設定。1号の幼稚園利用時間は4時間が標準だが、保育が必要な2、3号はフルタイム勤務者が利用する標準時間(最長11時間)か、パート勤務などが利用する短時間(最長8時間)かにより上限が異なる。
 これまで保育所の利用料は所得税を基に決められていたが、新制度では市町村民税の所得割が基になる。国は「利用料に大きな変動がないように設計している」とするが、実際の利用料は市町村が国の示した範囲内で設定する。
 深刻な待機児童問題の解決のため、政府は施設と人員に余裕がある幼稚園に保育所機能を加えた認定こども園を増やす方針だった。しかし、幼稚園から認定こども園への転換は進んでいない。国が昨年示した認定こども園への給付が低かったことなどが原因とみられる。
 政府はこれまで約19万人の保育枠を拡大したが、さらに約21万人の枠を拡大しなければ待機児童問題は解消しない。今後、認定こども園への移行をどう進めるかが課題だ。
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