子供の事故防止:遺族が独自に安全資格、受講希望殺到


毎日新聞
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 子供の事故防止を目指し、我が子を失った親が始めた独自の安全資格認定講座に、全国から受講希望者が殺到している。今年2〜3月に初めて開いた第1期の講座には、想定の4倍を超す応募があり、6月からは第2期と地方開催も計画中。小学校教諭や保育士など子供を預かる職業に従事する人の参加が目立ち、再発防止を願う遺族の思いに共感の輪が広がっている。
 講座を企画したのは東京都品川区の会社員、吉川豊さん(45)と妻優子さん(43)。2012年7月、長男の慎之介君(当時5歳)が、当時住んでいた愛媛県西条市の私立幼稚園のお泊まり保育で川遊びの最中、川に流され亡くなった。
 園側は慎之介君に浮輪やライフジャケットを着用させていなかった。安全意識の低さにがくぜんとし、事故の調査を県や市、消費者庁に求めたが満足な返答はなかった。納得がいかず、学校・保育事故の遺族が主催する勉強会やシンポジウムに参加。同じように事故が検証されず、対応で憤っている遺族が少なくないことを知った。
 文部科学省が今年2月に公表した報告書によると、児童生徒が死亡したり、重度の後遺症が残ったりした事件・事故で、05〜13年度に災害共済給付金が支払われたのは832件。そのうち、調査委員会が置かれたのは回答があった403件中78件しかなく、検証結果を公表したのは39件に過ぎなかった。
 「公の機関が何もしてくれないなら、自分たちで安全のプロを養成しよう」。昨年9月7日、慎之介君の誕生日に合わせ、事故で子供を亡くした親や専門家らでつくる「子ども安全学会」を設立し、独自の認定資格「子ども安全管理士」の講座を発案した。
 講師は教育・保育事故の研究に取り組む大学教授や弁護士、医師、遺族ら。組織の安全管理体制や事故予防だけでなく、被害者家族への対応や責任のあり方まで教えるカリキュラムを盛り込んだ。修了者には子ども安全管理士の資格が与えられる。ホームページで参加を呼び掛けると、50人の定員に保育士や教諭を中心に、全国から200人以上の応募があった。講座は全8コマ。奈良県橿原市から毎回通う新人保育士の女性(21)は「仕事に伴うリスクを知ることができて責任の重さを痛感した」と熱心にノートを取った。

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