保育園や幼稚園 災害時に乳幼児守れ…防災士の資格、安全講習


読売新聞
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 保育士や幼稚園の教職員が「防災士」の資格を取ったり、日本赤十字社の安全講習を受けたりする動きが広がっている。
 乳幼児は自力で避難や安全の確保ができないため、専門家は「防災の知識を生かして子どもを守ってほしい」と期待している。
 東京都墨田区の私立こひつじ保育園で3月、ほうきの柄と暗幕で簡易担架を作り、けが人を運ぶ訓練が行われた。担架の作り方を教えたのは、同園の保育士で防災士の資格を持つ小林圭悟さん(29)だ。
 同園では、小林さんの指導でこうした避難訓練を毎月実施する。同僚の鈴木ちひろさん(23)は「訓練のおかげで、『地震の時はすぐ非常口のドアを開ける』『トイレに子どもがいないかどうかチェック』という行動が取れるようになった」と自信を見せる。
 防災士は、NPO法人日本防災士機構(東京)の民間資格。地震や土砂災害、避難所の開設・運営に関する知識などが求められる。災害時には避難や救助のリーダーとして活躍することが期待されている。2003年の開始以降、約9万2000人が防災士の資格を得た。
 小林さんは東日本大震災の時、「屋外に避難していいかどうかも判断できなかった」との反省から、11年7月に防災士の資格を取得。その後に読んだ本の知識も生かし、非常食の備蓄や、「状況に応じて、子どもを迎えに来た保護者も園にとどまってもらう」という内容の防災マニュアルの作成なども行っている。
 小林さんは「資格を取ったことで、『災害時にも子ども全員を無事に家に帰せるようにしたい』という責任感が強まった」と話す。
 保育所や幼稚園の教職員に防災士などの資格を取得させる自治体もある。
 宮崎県は14年度、各職場で子どもの防災対策を進めてもらおうと、教職員を対象に防災士養成研修を実施、19人が合格した。松山市は13年度から教職員が防災士の資格を取得する際の費用を負担しており、35人が防災士となった。
 和歌山県は13年に施行した条例で、「災害対策推進員」という役職者を保育所などに置くよう義務づけた。中心となって防災対策に取り組んでもらうことを期待する。
 日本赤十字社は14年7月から、けがをした子どもの手当ての方法などを教える「赤十字幼児安全法講習」に、災害時の乳幼児支援も盛り込んだ。「言葉や態度で大丈夫と示す」などの心のケア、レジ袋とタオルによるおむつの作り方などを紹介する。
 幼稚園や保育所から毎年1万人ほどが受講しており、担当者は「子どもの心のケアや避難所での生活の仕方が、よりわかりやすく解説されている。受講者は今後さらに増えていくのではないか」と推測している。
 東日本大震災で被災した保育所の調査を行った、日本女子体育大学准教授の天野珠路たまじさん(保育学)は、「保育士や幼稚園教諭は、日常の保育を通して、子ども一人一人の成長や発達、健康状態を把握している。防災の知識も併せ持つことで、災害時に子どもを落ち着かせて避難したり、少しでも安心して過ごせるように避難先の環境を整えたりできるようになる」と話している。(吉田尚大)
(2015年4月16日 読売新聞)
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