介護と保育 将来見据え一体化推進を


西日本新聞
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 団塊の世代が全て75歳以上になる2025年には、介護職員が約30万人も不足するとされる。保育も需要がピークを迎える17年度末までに新たな保育士が約6万9千人必要になるとの推計もある。
 人口流出が続く地方では、高齢者や障害者、児童の各福祉を担う人材の確保がより厳しくなる。現状を放置すれば、サービスの提供が困難になることが予想される。座視するわけにはいかない。
 厚生労働省が、中山間地などで高齢者の介護や児童、障害者向け施設の統合を進める方向で検討を始めた。互いに利用したり、交流したりできる共生型の福祉施設を整備し、併せて人材の融合化も図る。4月に省内の検討チームを設置し、実現に向けての課題を今月中に整理する方針だ。
 住宅が点在する中山間地では、福祉サービスの拠点となる施設をそれぞれ設けるには限界がある。高齢者介護や児童、障害者向け施設を統合し、複数のサービスを手掛けることができれば、事業の経営安定にもつながるだろう。早急に具体策を講じてもらいたい。
 共生型福祉施設は地域によって形態が異なるものの、全国的に広がり始めている。
 福岡県や佐賀県などでは、高齢者が子どもたちと触れ合いながら介護が受けられる「宅幼老所」がある。全国でも介護施設が人材確保のために職員の子どもを預けられる施設を併設する事例がある。
 子どもとの交流で高齢者は生き生きし、障害者の社会参加への意欲を引き出す効果も期待できる。子どもたちも、お年寄りへの思いやりを身に付ける機会になろう。
 ただ、現状では分野別に異なる法律で福祉施設の設置と運営が定められ、臨機応変の対応は難しい。地域のニーズに応じてつくられ、変化にも柔軟に対処できる共生型の福祉施設を増やしたい。
 このような動きを後押しするには、限られた人材を有効に活用するための新たな資格の創設など法的な整備も必要ではないか。国や自治体とともに、社会全体で効果的な仕組みを考えていきたい。
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