育児観の違い 世代差伝え合って


東京新聞
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 四月初め、東京都台東区の日本助産師会で「子育て・孫育て講座」が開かれた。三家族の祖父母や妊娠中の女性らが、授乳期間や離乳食の開始時期など、時代とともに変化してきた育児観の解説に耳を傾けた。
 次女の出産を控えた埼玉県川口市の石田佳子さん(58)は、自分の子育て中に「母乳が足りていない」と実母に言われ悩んだと言う。「新生児の胃の大きさはウズラの卵一個ほど。一度に飲む量は少なくても大丈夫」との説明に驚いた表情を見せた。
 孫をふびんに思い、がんばってしまいがちな祖父母世代。特に祖母は「仕事と家庭の両立」の夢を娘に託す思いが強く、孫育てを引き受ける。だが自分の世代の常識を押しつけ、慣れない育児に悩む娘を追い詰めてしまうことがある。
 講座に同席したNPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子理事長(47)によると「祖父母がおやつを与えたり、テレビを見せるのを嫌がる夫婦も多い」。祖父母の努力と若い夫婦の希望がすれ違い、絶縁状態になったケースもある。
 一方、仕事に追われがちな子育て世代は、祖父母の体力や都合への十分な配慮が必要だ。孫育てが負担となって祖父母が体調を崩せば、育児と介護が同時に押し寄せてしまう。
 「子育ての基本は両親がし、非常時の対応を祖父母に頼むのが理想」と棒田さん。受講した石田さんも「私は応援に徹し、娘に『大丈夫』と声をかけることが大事と気付いた」と話した。
 快適な孫育ての鍵は情報共有だ。棒田さんはコミュニケーションシートの活用を勧める。一枚の紙を四エリアに区切り、祖父母が「孫とやってみたいこと」「子と孫にしてあげたいこと」を、子夫婦が「自分たちがしたい子育て」「祖父母に望むこと」をそれぞれ書きだす。「定期的に見直し書き換えていけば、家族独自の『育児書』ができる。作業を通じて互いのニーズをくみ取って」と助言した。
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