保育士不足、解消なるか 准看護師も活用へ、福岡市条例改正案


西日本新聞
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 保育士不足の解消へ切り札となるか-。22日開会した福岡市議会に、高島宗一郎市長は小規模保育所や事業所内保育所の保育士定数などを定める市条例の改正案を提案した。現条例は、看護師を1施設につき1人に限って保育士と見なすことを認めているが、これに准看護師を加える内容だ。保育の現場はどう捉えているのか。記者たちが議場から街へ飛び出し、実情を追った。
 赤ちゃんたちが、かわいらしい寝息を立てていた。午後1時、中央区渡辺通の小規模保育所はお昼寝タイム。条例改正案について保育士(31)に聞くと「准看護師さんの能力が分からない。保育士として受け入れるのは不安もある」との答えが返ってきた。
 市は、認可保育所の空きを待つ待機児童を解消するため、本年度約36億円をかけて定員1400人分を増やす方針だ。その分、保育士の数も必要になる。准看護師にも門戸を広げることで、人材を確保する狙いがある。実質的な対象施設は市内12カ所に上るという。
 経営側の受け止めはどうか。この小規模保育所の園長は「医療の専門知識は心強いが、子どもと接する専門知識はなく、保育士としての役割は期待できない」と打ち明けた。
 中央区赤坂のハローワーク福岡中央の吉村和浩介護労働専門官を訪ねた。「日勤のみを希望する准看護師なら、保育所勤務を希望するかもしれない。ただ、賃金面でどうか」。一般的に保育士よりも看護職の方が待遇がいい。複数の園長や副園長は「保育の現場なのに、保育士より給料が高い准看護師を雇えば、保育士はやる気を失う」と口をそろえた。
 条例は保育士の定数を、預かる園児数によって決めている。現場は、基準を満たすため保育経験の乏しい人が配置される事態を懸念する。ある保育士(52)は「数合わせではなく、保育士の補助的役割としてなら、准看護師が来てくれるのは助かる」と打ち明ける。フェイスブック(インターネット交流サイト)の西日本新聞ニュースページには、事故が起きたときの行政責任について疑問を投げ掛ける声も寄せられた。
 保護者の受け止め方はどうか。博多区の園に長男(1)を預けるパート女性(28)は「病気やけがをしたとき、准看護師さんならすぐ対応してくれる」と歓迎。「保育士さんの負担が増えるなら反対」(36歳の母親)との声もあった。
 市こども未来局によると、今回の改正案は厚生労働省の制度変更に伴い市条例を手直ししたにすぎない。現場の実態に即した市の独自施策ではなく、実効性は-。担当者も「待機児童がなくならないので、条例改正にとどまらない別の取り組みが必要だ」と認めている。

■メモ 保育士と看護師はともに国家資格で、准看護師は都道府県知事が与える免許。准看護師は医師や看護師の指示の下、医療行為の補助的役割を担う。現福岡市条例は、0歳児3人につき保育士1人を配置するよう定め、0歳児を4人以上預かる施設は1人に限り看護師を保育士と見なせる。改正案は、これを准看護師に広げる。
=2015/06/23付 西日本新聞朝刊=
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