[舛添流子育て]捨てない夫、自由研究で大活躍


読売新聞
------------------------------------------------------------------------------------------------
 夏休みになると、子どもたちの宿題が気に掛かります。とりわけ、自由研究は、テーマも自分で選ばなければならないので、相談を受ける親も頭の痛いところです。しかも、宿題に手を付けるのは、休みも終わる頃なので、始末が悪いのです。
 トンボやセミの羽化も、夏休み最後の週に何とか滑り込みセーフといった具合でした。ある年は、果連が、NHK教育テレビで放送していた「ピタゴラスイッチ」という番組に刺激を受け、自分でこのピタゴラ装置を製作することを自由研究のテーマに選びました。
 この装置は、山あり谷ありと、長いルートを考案し、ビー玉をスタート地点から転がし、多くの障害を乗り越えて、ゴールに達するというものです。変化に富んだルートを作らなければなりませんし、少しでも設計ミスがあると、最後の目的地に到達できません。テレビで見ていると、簡単なように見えますが、計算通りにビー玉を転がすのは至難の業です。
 ルートの1単位が20センチとすると、5種類作ると、1メートルの長さになります。どういうものを作るかは、果連に任せます。過去のNHK番組をビデオで見ながら、参考になる装置を次々と探していきます。そうしてアイデアが固まると、「建設」材料の調達は、パパの仕事となります。
 日曜大工が趣味のパパは、自分が作業した後に残った木材などの切れ端を大事にとっています。これが、多いに役立つことになるのです。たとえば、ルートの一部を革製品で作るというアイデアを出されると、モノを大事にしまっておく癖のある私は、おもむろにズボン用の古いベルトを持ち出して活用します。
 また、金属を使ったルートには、古くなった針金ハンガーを利用します。また、布製のルート作りには、捨てる直前のシャツを使います。まさに、資材供給業者としての面目躍如たるものがあります。

ゴミ屋敷論争で勝ちをおさめる

 ところが、モノを捨てないこの物持ちの良さが、妻からの総攻撃の対象になっているのです。朝から晩まで、「捨てろ、捨てろ」の口撃で、「このままでは家はゴミ屋敷になる」と、ものすご剣幕けんまくです。ところが、私の日曜大工の趣味のおかげで、我が家には、大工道具から材料まで、そろっています。今、住んでいる町内商店街から金物屋が撤退してしまったので、イザというときには、道具も資材もすぐには入手できません。
 そこで、私は、郊外のホームセンターでまとめ買いをして、必要な金物などをストックしておくのです。だから、真夜中に大工仕事が必要になっても、我が家は大丈夫です。しかし、ゴミ屋敷論争で、妻とは対立状態が続いています。
 そのような対立の中で、パパに軍配が上がるケースが、このように夏休みの自由研究用の道具・資材係を務めるときです。床にいつくばって、果連の製作を手伝います。組み立てが終わって、ビー玉がスタートします。途中でルートから飛び出したり、止まってしまったり、なかなか思うようにはいきません。しかし、何度か試行錯誤して成功すると、2人で万歳三唱です。
 しかし、最後にもう一つ難問が待ち構えていました。それは、いかにして作品を学校まで運ぶかということです。総延長が1メートルの代物です。そもそもパーツを組み立て製作したのですから、再度パーツに分割して運ぶしかありません。一つ一つのパーツが壊れないように、大事に包装して、大きな紙袋に収納しました。
 それを果連が頑張って学校まで持っていきます。そして、学校で組み立てます。いよいよ作品の展示です。何度か失敗した後に、何とか成功したときには、果連もほっとしたそうですが、何よりも安堵あんどの念が強かったのはパパなのです。
------------------------------------------------------------------------------------------------