マタハラ防止 安心して出産、育児を

マタニティ・妊娠中の女性のイラスト(ソフト)
北海道新聞
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 妊娠、出産、育児により、職場で不当な扱いをうけるマタニティーハラスメント(マタハラ)に苦しむ女性が一向に減らない。
 労働力不足や深刻な少子化が懸念される中、女性が働きながら安心して子どもを産み、育てられる環境づくりは喫緊の課題だ。
 安倍晋三首相は「女性が輝く社会」を提唱し、大企業に女性管理職登用の数値目標などを義務づける女性の活躍推進法も成立した。
 だがマタハラが横行するようでは「輝く社会」の実現は難しい。
 政府はマタハラ防止に関する法律の策定準備を始めており、来年の通常国会に提出する方針だ。
 マタハラが女性の尊厳を傷つけ、社会にもマイナスであるという認識に基づき、しっかりとした法律に仕上げるよう求めたい。
 全国の労働局に寄せられたマタハラをめぐる相談は年々増え、昨年度は4千件を超えた。
 妊娠を伝えた時や、出産・育児休暇から復帰した時の退職強要、降格、嫌がらせ的な異動など、さまざまな事例が寄せられている。
 連合の調査では、出産経験のある働く女性の3割が何らかのマタハラ被害を経験し、6割以上が改善傾向を感じていなかった。
 第1子出産を機に6割の女性が仕事を手放しているのも、こうした職場環境と無縁でない。
 男女雇用機会均等法はマタハラのような行為を禁じている。しかし罰則規定がないことや、職場の無知、不理解で浸透していない。
 最高裁は昨年10月、妊娠による降格は違法との初判断を示した。
 これを受けて、厚生労働省は今春、「妊娠や出産、育児休暇終了後1年以内の解雇や降格は違法」とみなす方針を示し、全国の労働局に指導の徹底を図った。悪質な事業所名の公表も指示した。
 それでも行政指導には限界がある。法制化に当たっては、違法行為を具体的に示すとともに、妊娠した同僚を職場で支えることを促す、充実した内容にしてほしい。
 マタハラ防止には、出産したら女性は家庭で育児を―という「家制度」の名残のような考え方も、社会全体で見直す必要がある。
 出産、育児と仕事の両立に向けて、保育所を増やすなど子育て環境の充実が急がれる。
 配偶者の協力を得るためにも、長時間労働を解消し、男女とも休暇を柔軟に取得できる仕組みも要るだろう。
 マタハラ根絶の取り組みは、働き方を根本的に見直す足がかりにもなるのではないか。
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