“ネウボラ”に学べ 出産・子育て支援



読売テレビ NEWS&WEATHER
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キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。29日は、「ネウボラ」をテーマに日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。

 ■ネウボラとは?

 「ネウボラ」は、フィンランド語で「アドバイスする場所」という意味をもちます。出産や子育てについてアドバイスするサービスやそれを行う施設のことなんですが、フィンランドではすべての自治体でみんなが無料で利用できるんです。

 そして、こちらをご覧ください。箱の中に、ベビー服、絵本、おもちゃや寝具類など、こういった品物が50点ほど入っています。実はこれ、フィンランド政府から支給される「育児パッケージ」というものなんですが、妊娠してネウボラで健診を受ければ全員がもらえるんです。

 日本の場合、妊娠したら健診、出産したら赤ちゃんの予防接種、さらには育児の悩み相談などの機会がありますが、その都度、病院や保健所、子育ての支援センターなど、行く場所がバラバラですよね。

 フィンランドでは、妊娠したとわかった時から子供が小学校にあがるまで、健診や予防接種、悩み相談などの全てのサービスをここだけで無料で受けられる仕組みになっているんです。

 さらにネウボラには、それぞれの家族にネウボラおばさんと呼ばれる専属の保健師がついて、子育てだけでなく、家庭の悩み相談などに対応する継続的な支援の体制が整っているんです。

 ■“ネウボラ”を手本に…名張市の取り組み

 日本でも、ネウボラをお手本に取り組みを始めている自治体があります。三重県名張市では、去年7月からおもに高齢者の相談窓口となっていたまちの保健室、市内15か所を、子育て支援の拠点としました。そして、常駐する看護師らを子育ての相談にものるチャイルドパートナーに任命。いわゆるネウボラおばさんですね。保健室では紙おむつ専用のごみ袋を無料配布するなどして、相談事がなくても気軽に立ち寄れる工夫をしているそうです。

 市の担当者によりますと、こうした名張版ネウボラの導入で、チャイルドパートナーが親と継続的に会話を交わす中でその悩みに気づき、児童虐待など深刻な事態を未然に防ぐことができたといいます。

 ■浦安市では「こんにちはあかちゃんギフト」

 また、千葉県浦安市では、今年4月から、市独自の研修を受けた子育てケアマネジャーが妊娠・出産・子供の1歳の誕生日の3回の節目で、母親と面談する取り組みを始めました。面談では、それぞれの家庭環境を踏まえて、出産や育児の相談のほか、公的支援のサービスの紹介を受けることができるんです。

 さらにこの面談に足を運ぶと、こうした「こんにちはあかちゃんギフト」がもらえます。フィンランドの「育児パッケージ」を参考にしているんですね。浦安市はこうしたギフトなどもきっかけに、母親たちに相談に来てもらいたいとしています。

 ■政府、全国にサービス拠点を検討

 政府は、フィンランドのネウボラのような出産・子育てを継続的に支援する仕組みが日本にも必要だとして、おおむね5年後までには、地域の実情に合わせたサービス拠点を全国に設置したいとしています。

 ■課題も

 しかし、そこには課題もあります。フィンランドの福祉に詳しい吉備国際大学の高橋教授は、日本版ネウボラを普及させるためには「親のニーズに合ったわかりやすい仕組みを作ること。また、サービスの質を保つためにも特に保健師の人材育成が重要」だと指摘しています。

 ■きょうのポイント

 きょうのポイントは「優しい社会」です。核家族が増える中、ネウボラのような、身近にいて、しかも専門性をもったプロからのアドバイスを継続して受けられたら、どれだけ子育て中の親は救われることでしょうか。お母さんに優しい社会は、子供やお父さんにも優しい社会となるはずで、そのヒントがネウボラにあるように思います。

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