子育ては適当でいい!?「テキトー母さん」著者に聞いた1人でできる子の育て方

子育ては適当でいい!?「テキトー母さん」著者に聞いた1人でできる子の育て方


日刊アメーバニュース
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子育ては日々、迷いや悩みの連続。

この子の成長・発達はこれでいいの?しつけはどうしたらいい?
私の子育てはこれで正しいの?と不安にかられることもありますよね。

また今は育児書や雑誌、インターネット、クチコミなど様々な情報が溢れていて、何を信じるのがよいのか迷うことも。

「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)では「子どもが自立する、お母さんもラクになる」をモットーとした、45のアドバイスが綴られています。

子育てイコール一生懸命、というイメージですがお母さんなのにテキトーでいいの?どうやったらテキトーになれるの?という疑問を胸に、著者である立石美津子さんにお話を伺いました。

「偉いね」「すごいね」は褒めたうちに入らない!?

——いまは「褒める」ということが子育ての時流のように思っていたのですが、『テキトー母さんのすすめ』によると「お利口だね」とか「偉いね」ということではない、とのことですね。この違いは何なのでしょうか?

立石美津子(以下、立石):まず、「偉いね」「お利口だね」「すごいね」という褒め言葉は「抽象的で意味不明」であるということが問題です。
また、種類が5種類か10種類くらいしかなくて、褒め言葉として貧弱です。

「偉いね」「お利口だね」って1日中言っていると子どもにとっては耳にタコ状態になってしまいます。

子どもも言われた当初は嬉しいと感じていますが、そのうち雑音のようになってしまって、「何かをやらせるために『偉いね』って言っているのかな」と気付きだします。

叱るときも「ダメ」とか「コラ」とか「いい加減にしなさい」とか「ちゃんとしなさい」というお決まりのパターンでは全然言うことを聞かないのは何で叱られているのか、何がいけないのか子どもには分からないまま。
だから1日中叱ることになります。

「褒める」より大切なのは「ママは見てくれている」と思わせること

「何時までに出かけるからこの時間までに用意しようね」と何回か言えば、言われなくてもできるようになるのに「早く」という抽象的な言葉では意味が分からずにその言葉に条件反射するようになります。

「褒めて育てる」というのは正しいことですが、「すごいね」と言えばいいのかと言うとそうではありません。単に「認める」だけでいいんです。

——「認める」というのはどういうことでしょう?

立石:褒めるのが苦手なのであれば子どもがやっていることを実況してあげればいいんです。

「ご飯全部食べてるね」「お片づけできているね」と横で実況するってこと自体子どものことを観察していることなので、「ママは僕のことを見てくれている」と理解し、言われなくてもやるようになります。

本来、勉強とか片付けとか挨拶というのは、それをやると綺麗になる、物もなくならない、気分がいい、挨拶をすれば相手も返してくれて嬉しい、ということが動機で習慣づけられるものですよね。
「片付けたから偉い」ではなくて、「片付けたから綺麗になって助かる、お母さんは嬉しい」と言葉に変えることが褒めることになるのではないかと思います。

「ゴミを拾って偉い」と言うと、わざとゴミを散らかして、先生の前で拾って見せるような子もいるんです。
ゴミを拾うっていうのは誰が見ているからするものではなくて、自然にすることですよね。
だからずっと褒めるっていうのはあまり必要ないと思います。

「頑張ったからご褒美」は逆効果!

また、頑張ったからってお菓子やゲームなどのご褒美をあげるというのも良くないですよね。

頑張ったねと言葉をかけるとか、テストでいい点を取ったらみんなで拍手とか、花丸をつけるとか、シール程度のものをあげるならよいのですけど、お菓子やゲームとご褒美がエスカレートしていくと、そういうものがないとやらない悪習慣がついてしまいます。

勉強って自分の知的好奇心が満たされるとか学力がつくってことに移行していかないと、親に言われたってやるようにはならないですし、「勉強しろ」って言ったってやらないのは勉強する気がない、それをやっても楽しくないからですよね。
だから形で評価するというのはよくないと思っています。

昨日、1週間前と比較してあげる

——私は2歳9ヶ月の娘がいて、最近スプーンやフォークをうまく使えるようになってきたんです。そこで、早く手がかからないようにしたくて、必要以上に「偉いね、お利口だね」って
褒めて伸ばそう!と考えてしまうのですが、これは間違っているのでしょうか?
偉いね、と言わなくてもうまく使えるようになるには何と言うのが正しいのですか?

立石:褒めたからって早く使えるようになるとは限らないですよね。
だから「今日もスプーン使えたね、明日も頑張ってね」って言うくらいでいいと思いますよ。

今も3分の1はスプーン、残りは手づかみでいいんです。それを続けているとスプーンの割合が増えていく。お箸に切り替わったときも、最初の3,4口だけで、あとはほとんどスプーンでもいいんです。

それを続けたら「今日はほとんどお箸で食べられた」って自分でも達成感を感じて、それが動機付けになるわけです。

——月齢の近い子がもうだいぶうまく食べられるようになっていることに焦りを感じて、
自分の子どもにも頑張ってほしくて褒めていたんですが、それは間違っていたってことですね。


立石:比べるってことは絶対にやらないほうがいいです。
手先の器用さとか発達って本当に全員違うものですから、スプーンがうまく使える子が他のことも全て優れているかっていうと絶対そうではないんですよ。

だから「昨日はスプーンをちょっとの時間しか使えなかったのに、今日は長い時間使えたね」って言ってあげれば、進歩しているし、自分としても実感がありますよね。

それを他の子と比べていたら追いつかないし、一生比較することになってしまう。
小学校に上がったら「あの子はテストで何点だった」とか「○○ちゃんはどこの学校に合格した」とか。

そうやってずっと比べていたら親だって永遠に満足できませんし、子どもだって「親から認められていない」って気持ちの始まりになります。

同じ親から生まれた兄弟だって違うのですから、比較するっていうのは絶対にしないほうがいいです。

祖父母や周囲からの言葉は聞き流すことが大事!

——第3者から何か言われたときは、無視していればいいんでしょうか。

立石:とにかく無視する、聞き流せばいいんです。
食事を食べる子食べない子って言っても人それぞれ胃の大きさも違えば、嗜好も違う。
だけど前と比べたら確実に食べる量も種類も増えているはずだし、「昔は母乳しか飲んでなかったのに今は固形物を食べられるようになってる!」と思えばすごい成長ですよね。

——確かにそれはすごい成長ですよね(笑)

立石:学校の点数だって同じで、40点取った子が60点、60点から80点って取れるようになったら、すごく頑張っているわけですよね。
それを100点を取っている子と比べると、うちの子はダメだって評価にしかならないですし、もうやる気が失せてしまいます。

絶対、一週間前、昨日と比べても絶対に何か変化があるはずなんです。

でも他の子と比較すると見えなくなってしまいますし、親の考え方はいつしか子どもの考え方になってしまいます。「僕は○○君に比べるとあれができない、これができない」と言う風に…。ですから、比較するのは早めにやめて、その子自身の成長を見てあげましょう。

——昨日は全部食べたのに今日は残した、とか成長が後退しているように感じたときはどうすればいいのでしょうか。

立石:大人だって食欲がある日やない日があるように、人の成長ってずっと右肩上がりではなくて、一進一退したり、時には踊り場があったり、後退することもあるけど、遠くから見ると成長しているものです。
体調にもすごく左右されるし、いちいち「どうしたの?」とか声をかける必要はありません。

一喜一憂しないことが大事かなと思います。

——今は、雑誌やネットなどで子育ての情報が溢れすぎていて、振り回されてしまうことも少なくないと思いますが、今子育てをしているお母さんが「テキトー母さん」になるために必要なことって何でしょうか?

立石:お母さんが自分に自信がないから、子育て情報に頼ってしまうんじゃないかと思います。自分が、自分の直感が一番正しいって信じることが大事です。

ネットや本に書いていることって、著者はあなたの子どもを見ているわけではありませんから、あなたの子どもの事はわからないで書いている訳です。
うちの子はこういう性格で、こういうことをすると嬉しがって、こういうことが苦手だっていうデータベースみたいなものは0歳から育てているお母さんが一番正しい情報を持っている。
どんなに偉い先生が言っていたって母親にかなうものはないですよ。

先日も「色んな本を読んでいるんだけど、自分の子どもにどう置き換えるか分からない」と相談してきたお母さんが悩んでいたのは「子どもが食事中に何度も席を立つ」ということでした。

「本には『食事中は最後まで座らせなくてはいけない』って書いているけど、どうしても集中力が切れて席を立ってしまう。どうしたらいいですか?」って聞かれたから「席を立ったら食事を下げてしまえばいいんですよ」と答えました。
次のご飯まで何もあげなかったら「あの時、席を立ったからこんな目に遭うんだ」って理解するようになります。

更に「後でお腹が空いたって言ったら何かあげてもいいですか」と聞かれたので、「それをやったら元も子もありません。だから、どんなにひもじい思いをしても、12時まではあげない、お腹が空いたって泣きつかれても『さっき席を立ったからご馳走様ってことでしょう』と言えばいいんです」と答えました。

スーパーで地べたに座り込んで泣かれたら、どうすればいい?

——家の中でならまだできる気がするのですが、外出先ではどうすればよいでしょうか?
本にはスーパーで「お菓子買って」と言われても今日は買わない、と決めたなら買う必要はないとありましたが、泣かれたり、周囲の迷惑にならないかと思うと、つい買ってしまったりします…。


立石:スーパーで地べた泣きされてしまったら、買い物をやめて帰ってしまいましょう。
何を優先するのか?ということですが、周囲に迷惑だと思われてツラい、まだ買い物を継続したい、でも子どものしつけをしたい、と複雑になるところを、「今日は心を鬼にしてしつけをする」と決める。

そのために、出かける前に約束をしておくとよいですよね。約束なしに事が起こってからもぐら叩きするのでは大変ですから。

「今からスーパーに行くけど、今日は何も買わないからね」って、それもお皿洗いしながらではなくて、向き合って「大事なお話があるからね」と伝える。指きりするのもいいかもしれません。

スーパーについたら入り口でもう一度、「さっき何て約束した?」と聞き返し、「お菓子買わない」「覚えてるね、そうだよね」と。そうしたら5分くらいは騒がないと思います。そうしたら、そこで褒める。「お菓子欲しがってないね、約束守っているね」と。
これで欲しがらなくなりますよ。

それをせずに連れて行くとバトルになります。

しつけをするんだってことを最優先にしようと思ったらそこまで計画を立てなきゃいけません。

泣いてしまったら…と周囲の目を気にして買い与えてしまったり、決めたことを親自ら翻すと、すべてのしつけが付け焼刃になります。

子どもにしたらお菓子を見たら欲しくなるに決まってるし、でものべつまくなし買ってやるわけにはいけないわけだから、ルールを決める必要があります。

それでも騒いだら抱きかかえてでも帰っちゃえばいいんです。そうしたら「買ってもらえない」ということを学ぶので、次回からは騒がなくなると思いますよ。

ネットや本は具体的なことは書いていなくて一般論が書かれているものなので、それを自分の子どもに落とし込むときはもっと自分の直感を信じてしつけていくことが大事だと思います。

——今日からちょっとやってみます。

子ども主体の話し方ではダメ! ママはどう思っている?

立石:本の最初にも書いてありますが、「お菓子買ってって言わないの!」と子どもを注意するよりも「今日はお菓子を買わないよ」「今日はお母さんは買いたくないし、買うお金もないの」というIメッセージ(「私」を主語にした表現)にしましょう。

YOUメッセージで「あなたはわがまま」「欲しがっちゃダメ」など言うのではなく、部屋の片付けにしても「お母さんは部屋が散らかっているのは嫌だから片付けてほしい」と言うのがいいです。

子どもを否定しない、ということにも繋がるので、しつけをするにはIメッセージを使っていきましょうね!

「テキトー母さん」のテキトーの意味は?

日々、子どもが成長していくということは、親の悩みも変わっていくということ。
他人と比べない、ネットや本より自分の情報が正しいと信じる、よく考えてみると当たり前のことなのに、いっぱいいっぱいになっていると、なかなかそのことを思い出せなくなります。

立石さんとお話していると「テキトー母さん」のテキトー、とは周囲の言葉や反応に「テキトー」でいられるということなのかなと感じました。

立石さんは現在「テキトー母さん」シリーズの続編を執筆中とのこと! 今から続編が楽しみです。

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