「子ども食堂」心も満腹 本紙報道で食材提供や寄付続々

「子ども食堂」心も満腹 本紙報道で食材提供や寄付続々
大川昇開橋温泉に設置された募金箱=福岡県大川市向島

西日本新聞
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 貧困などの事情を抱える子どもたちに食事を提供する「子ども食堂」と、食品を届ける「フードバンク」の取り組みを紹介した西日本新聞の記事を受け、九州各地で食材の提供や寄付の申し出が相次いでいる。「子どもたちに、おなかいっぱい食べてほしい」と米や野菜を届ける農家。「わずかな額だけど」と蓄えを持ってくる夫婦。子どもを助ける善意の輪が広がっている。
 本紙は、11月7日付朝刊で福岡県久留米市や福岡市、長崎市で取り組まれている「子ども食堂」の様子を報じた。運営は、自費や寄付で賄うところが大半だ。
 「金も労力も注いで、自分にはまねできない。少しでも応援させてほしい」。佐賀県内の自営業男性(60)は取材班にこんな声を寄せた。長崎市の「夢cafe…ひまわり」で毎週無料のカレーを提供する川井健蔵さん(68)に連絡を取ると、川井さんは喜んで佐賀県の男性宅を訪ねた。2人で約30キロの米袋七つを車に積み込み終え、川井さんは深々と頭を下げた。男性は「新聞を読んで、どうしてここまでできるのかと感心させられた」と語った。
 「ひまわり」は昨年11月に開設。川井さんは家賃や食材費など月約10万円を負担する。「たくさんの善意が活動を支えてくれている。格差社会が進み、苦しんでいる子どもたちを少しでも助けたい」。活動を続ける勇気ももらったという。
 「困っている子どもたちが身近にいることに驚いた」。久留米市の自営業女性(74)は、自身の店で取り扱う菓子やカレー粉などを同市の子ども食堂に提供したいと申し出た。市内の別の男性(68)は記事で自分の少年時代を思い出した。「戦後の食べ物がない時代で、つらかった。子どもたちにそんな思いをさせたくない」。自分で育てた野菜を届けるつもりだ。
 福岡県大川市の大川昇開橋温泉は、記事を読み募金箱を設置した。今後は、温泉で開催するイベントの収益の一部を寄付することも検討している。支配人の百武義明さん(59)は「何か私たちにもできることはないかと考えた。息の長い支援を続けていきたい」。
 掲載後の数日間で、支援の申し出は40件を超えた。
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 14日付朝刊では、生活が苦しい家庭や福祉施設に食品を届けるNPO法人「フードバンク北九州ライフアゲイン」(北九州市八幡東区)の活動を紹介した。バンクの連絡先も掲載すると、農家や一般家庭から食料提供の申し出が相次ぎ、米は6人から約300キロが届いた。ボランティアの申し出もあったという。
 1600個の卵を寄贈した福岡県糸島市の養鶏業「緑の農園」の早瀬憲一取締役(27)は「以前から、おなかをすかせた子どもたちに自慢の卵を食べてほしいと考えていて、新聞記事が背中を押してくれた」。
 バンクの原田昌樹理事長は「一人でも多くの市民が生活困窮者と食品ロスの問題に関心を持ち、かかわってくれることが大切」と話す。特にボランティアが不足しており、協力を呼び掛けている。
=2015/11/22付 西日本新聞朝刊=
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